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残業削減を考える H16.5月号より | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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残業削減を考える H16.5月号より

残業削減を考える H16.5月号より

この不況下、できる事なら削減したいのが人件費です。でも賃金カットは簡単ではありません。しからばせめて残業代だけでも何とかならないか。売上は減っているのに残業はなくならない。そんなときにちょっとした対策で改善が図れる事があります。

① 時間外労働を届出制にする

例えば残業するときは4時までに理由を届出する。会社は事前に理由を限定しておき、該当理由以外なら却下。原則的に承認のあった時間外労働しか認めない。実務的に削減することともに、心理的抑制効果も期待。

② 1年単位の変形労働時間制を組替える

1年単位の変形労働時間制を改定して、1日の時間にも弾力性を持たせる。事前に業務の繁閑が予測できるなら可能。最高1日10時間、1週52時間まで設定でき、これを超えた時間が残業になる。繁忙期には長時間で設定して、閑散期には所定時間より短く設定。

③ 年間休日を削減して残業単価を下げる

変形制の年間休日を最低付与日数で設定する。1日7時間45分の会社の場合、年間では最低96日の休日があれば、40時間制を達成する。こうすることで残業時間は同じでも支給額は削減される。時短とは逆行するので、期限を切って暫定措置として行う。

④ 賞与で調整する

実際の残業に対してはとりあえずはつける。しかし賞与を利用して、年収ベースでは、賞与から控除できる仕組みにする。会社が命じる残業など必要な分を除いて、残業をすればするほど評価が下がる仕組みを作っておく。

⑤ 36協定の上限時間を厳しくする

時間外、休日労働をさせる場合は監督署へ36協定の届出が必要。その際、1年変形の会社は1か月42時間以内、年間320時間以内の制限があり、これを根拠に法律上それ以上残業が出来ない仕組みにする。

⑥ 定額残業制にする

個人別の残業時間平均額分を、固定残業代として残業をしなくても支給。それ以上の分は会社が特別に命じたとき、申請のあったときを除いて、固定分以上の時間外を認めない。

⑦ 請負制にする

職種によっては請負制にして外注費でおとす。労働者ではないので残業代自体が発生しない。ただ実態が伴っていないとダメで、、請負契約の作成、裁量を認めるなど運用面で気をつける必要がある。

⑧ タイムカードを廃止する

タイムカードを廃止して、出勤簿管理に切り替える。タイムカードは罪の意識なしに、時間外を印字してしまうので、出勤日に各自が認印を押印する様式に改め、残業が必要な日には上司現認のもと自己申告で附記させる。

⑨ ノー残業デーを設ける

週に1回、ノー残業デーを設ける。全員が強制的に定時で帰る日を作り、実際の残業を少なくするとともに、意識面での改革を図る。

⑩ 時短コンピテンシーを作る

評価ガイドラインとして、「コンピテンシー」(恒常的に高業績を上げる社員の行動特性、それを行えばみんなの行動の質が変わり、体質強化に寄与する)を使う。これを時短(残業抑制)に絞って作りこみ、全社員に開示、ミーティングや朝礼等で徹底する。定時までに効率よく仕事を済ませる人がいれば、その人をモデルに作りこみ、いなければ全社員参加でノウハウを出し合う。

⑪ 臨時工で対応する

夕方以降の業務については、可能なものから学生・フリーター等のアルバイトに切り替える。時給1000円から1200円位で雇っても、正社員の残業単価よりは安くなる。

⑫ フレックスタイム制を導入する

個人裁量のある職種に対してはフレックスタイム制を導入する。これにより本人が業務に必要な時間帯や日を集中させて濃度を高めるとともに、それ以外の時間帯や日に関しては労働密度を薄くして、効率的に仕事をしてもらう。

⑬ 裁量労働制を採る

裁量労働制とは当該業務の遂行の手段、時間配分等を労働者の自主性に任せ、指示命令しない制度。労使協定で定めた時間を労働したものとみなす。つまり1日8時間とみなすとすれば、実際の時間数に関係なく8時間分の給料だけ払う。細かな指図は出来なくなるが、無尽蔵な残業を抑制することが可能。

⑭ 終業時間に弾力を持たせる

残業の恒常的に多い人は、とりあえず定時の終業時間にこだわらず、仕事が終わり次第帰宅してもいいようにする。その場合であってもとりあえず定時までは賃金保証する。元々定時迄に終わるはずの仕事をだらだらしている職場には効果的。定時までに通常業務がこなせる実績を積み上げてから見直す。

⑮ 概念を改める

朝礼、ミーティング、社内報、ポスターなどによって、「残業は悪である」という社風を作る。社員の行動を規律するのは社風によるところが大きい。本来残業は、会社の命令があって始めて発生するものであって、勝手残業は認めない。本人に元々早く帰ろうという意思がないとか、長くいることが善であるとか、他の人の手前帰りにくいとかといった雰囲気を払拭してゆくことが大事です。

⑯ 社内評価制度の見直し

製造業や倉庫業などに多い傾向ですが、もともと従業員自身に残業が好きな体質があります。理由は簡単で、残業しなければ給料が上がらないからです。営業職などは自分の頑張り次第で成績を上げ、歩合や報奨金という形で給料アップさせる道があるが、自己裁量のない製造工などは長く働く事でしか、その道がない。従って時間軸以外に給料が上がる評価軸を構築してゆく必要がある。

⑰ 経営者の意識改革

特に中小製造業の社長に見られる傾向ですが、長く働いてくれる事が美徳として捉えられていることがあります。確かに遅くまでやっていると、よくやってくれているように見え、安心するものですが、社長自身のその感覚がだらだら残業を常態化させている側面があります。8時間で100個作れるよりも、7時間で100個作ってくれる方が当然良いわけですから。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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