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人事の要諦 採用にもっともっと神経を使おう!  (H18.7月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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平成18年1月~12月

人事の要諦 採用にもっともっと神経を使おう!  (H18.7月号)

~如何に有能な人材が採れるかではなく、採ってはいけない人材を排除する~

 企業の人事労務政策には実に様々なメニューがあります。就業規則、社員教育、賃金、退職金、評価制度、提案制度、社会保険、福利厚生、職場環境整備など・・・・・。そんな中で一番重要なのが人材の確保、つまり採用に関することです。いい「人財」が採用できれば、会社にとって一番いいのですが、中小企業の場合、現実問題としてなかなか目にかなう「人財」が来てくれません。仮に来てくれたとしても、受け入れる企業の方にその人を生かす環境がないため、逃げられてしまうことも良くあります。
 ここで視点を変えて、いい人材を採用するのは難しいからそこに意識をおくのではなく、如何に採用してはいけない「人罪」を水際で排除できるかが重要です。何故ならできる社員は全体の2割しかおらず、ここを採るのは至難の業です。6割は普通の人ですから、これを教育してゆくしかありません。そして残りの2割に貴社にとって採用してはいけない「人罪」があるのです。ところがこの残りの2割が中小企業に当たる確率が結構高い。何とかこれを回避して、せめて普通の人を安心して雇えるようにならないものでしょうか?
 そこで今回は採用に失敗しない5つの方法をご紹介したいと思います。それは、1.募集広告をもっと研究しよう 2.自分なりの足きり基準を作ろう 3.履歴書をもっと重視しよう 4.適性診断を行なおう 5.採用シートを有効に活用しよう の5つです。

1.募集広告をもっと研究しよう
 まず何と言っても選べるだけの応募がなければ話になりません。人を採用するときにも色々な採用媒体があります。求人雑誌、折込チラシ、ハローワーク、インターネット、口コミ紹介などが代表的なものです。また一口に求人雑誌いっても、ホワイトカラー向き、技術者向き、女性向き、アルバイト向きなど読者傾向があり、その他にも主婦パートを狙うのか、地元優先なのか、新卒採用なのかなどによっても、選ぶ媒体が変わってきます。今、貴社が採ろうとしている人材が媒体とマッチしているかをまず検討すべきです。その上で媒体が決まったら、募集内容にもっと神経を使いましょう。広告プランナーの提案を受けながらも、その会社のことを一番分かっているのは貴方自身ですから、自社の魅力を精一杯伝えて表現してもらいましょう。
 例えばパートさんを採用するとします。そして御社が労働法に規範意識のある会社だったとします。そうすると「有給休暇が取れます」「割増残業手当支給します」など当たり前のことを書くだけでも武器になることがあるのです。パートでも有給の権利があるのはご承知の通りですが、実際問題として積極的に付与している会社はほとんどありません。しかしパートの立場に立ってみたら、何故その人はパートで応募してくるのでしょうか?色々な事情があるにせよ、子供や介護の関係からフルに働けないとか、夫の扶養の範囲で働きたいとかいう動機がほとんどでしょう。そんな方々に高い時給や昇給は有効でしょうか?高くすると年末近くに雇用調整が始まるのが落ちです。また10円昇給したところでそのありがたみは一時のものです。すぐ当たり前になります。それよりも子供や介護の為に自由に有給が使える会社の方が、どれだけ有難いでしょうか。コスト的にも10円昇給するより、トータル的には有給休暇のほうが安いです。そうすると別に特別なことをしなくても、当たり前の待遇が他社と比較してまだまだ今の時代は武器になるのです。広告においては人はほんのちょっとした文言で左右されます。広告屋さん任せにせず、来る人の立場に立って、もっと真剣に広告に取り組みましょう。

2.自分なりの足きり基準を作ろう
 中小企業の場合、応募者と面接する決定権者は、ほとんどが社長自らであることが多いと思います。それならば、もっともっと人に妥協せず、経営者自らの「ここは絶対に譲れない」という足きり基準を設けておきましょう。次で述べる適性検査の結果や面接の印象が仮に良かったとしても、妥協しない基準を設けておくのです。
 例えばこれはある会社の基準ですが、そこは事務所が土足ではなく上履きになっていて、社長はいつも靴の脱ぎ方を見ています。そして靴を手できちんと入室と反対方向に揃えなければ、アウトにしています。その社長いわく「うちは形のないものを人間力で販売するサービス業である。靴もきちっと揃えられない人は、ろくな家庭教育を受けて来なかったはずである。一事が万事。そういう人は採用しない」
 この基準が合っているとか間違っているとかではなく、採用の自由がある経営者は(これは採用後は色々な法的制約を受けることの裏返しです)、自分なりの価値観で妥協しない一線を持っておくべきではないでしょうか。もしそういった基準も持たずに漫然と面接しているとしたら、一度考えてみてはいかがですか。

3.履歴書をもっと重視しよう
 私の事務所は社労士事務所ですから、社会保険の手続き業務をしております。当然人の入社にかかる事務も代行させてもらうのですが、その時に資料として頂くのが採用者の履歴書です。これを元に色々な手続きを進めてゆくのですが、この履歴書に疑問を感じることがよくあるのです。それはどういうことかというと、余りにも記載方法がずさんであったり、稚拙である履歴書であるにも拘わらず、採用してしまっている事実です。選べるほど来なかったなど色々な事情があったのでしょうが、履歴書をもう少し重視してみてはいかがでしょうか。
 これは前記の採用基準を設けることにも繋がるのですが、こんな履歴書なら採用しないことにしている会社の事例を紹介します。
まず写真がきちんと貼ってあるか。よく当事務所に送られてくる履歴書には写真が貼ってないものがあります。別に指示されなくても、気が利く人間なら貼るべき所にはちゃんと貼ってくるのが常識ではないでしょうか。2番目には、書くべきところがきちんと埋まっているか。例えば、郵便番号が抜けている、フリガナ欄にフリガナがふってない、通勤時間欄に時間が記載されていない、など。どうして書くスペースがあるのに省略してくるのでしょうか。確実に仕事がこなせる人間だとは思えません。3番目には、書き直している事例です。よく修正液などで訂正して、その上から記入しているものですが、審査してもらいに来ている人間の態度として軽すぎませんか。一度しかないチャンスです。最後の行で間違えたとしても、最初から書き直すくらいの慎重さ、丁寧さが欲しいものです。
 このように履歴書一つだけでも、その内容を問う前に様式からある程度人間性を判断できることがあります。不備でもその上であえて採用するという高度な判断をするならいざ知らず、そうでなければもう少し意識して履歴書を扱いたいものです。

 なおこの続きの「4.適性診断を行なおう」「5.採用シートを有効に活用しよう」は次回にお話させていただきます。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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