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人事の要諦 採用にもっともっと神経を使おう! その2  (H18.8月号) | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

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平成18年1月~12月

人事の要諦 採用にもっともっと神経を使おう! その2  (H18.8月号)

~如何に有能な人材が採れるかではなく、採ってはいけない人材を排除する~

 企業の人事労務政策には実に様々なメニューがあります。就業規則、社員教育、賃金、退職金、評価制度、提案制度、社会保険、福利厚生、職場環境整備など・・・・・。そんな中で一番重要なのが人材の確保、つまり採用に関することです。いい「人財」が採用できれば、会社にとって一番いいのですが、中小企業の場合、現実問題としてなかなか目にかなう「人財」が来てくれません。仮に来てくれたとしても、受け入れる企業の方にその人を生かす環境がないため、逃げられてしまうことも良くあります。
 ここで視点を変えて、いい人材を採用するのは難しいからそこに意識をおくのではなく、如何に採用してはいけない「人罪」を水際で排除できるかが重要です。何故ならできる社員は全体の2割しかおらず、ここを採るのは至難の業です。6割は普通の人ですから、これを教育してゆくしかありません。そして残りの2割に貴社にとって採用してはいけない「人罪」があるのです。ところがこの残りの2割が中小企業に当たる確率が結構高い。何とかこれを回避して、せめて普通の人を安心して雇えるようにならないものでしょうか?
 そこで今回は採用に失敗しない5つの方法をご紹介したいと思います。それは、1.募集広告をもっと研究しよう 2.自分なりの足きり基準を作ろう 3.履歴書をもっと重視しよう 4.適性診断を行なおう 5.採用シートを有効に活用しよう の5つです。
と、ここまでは前回も記述した冒頭部分です。前回は失敗しない方法の内、1から3を述べました。今回はその続きの「4.適性診断を行なおう 」「5.採用シートを有効に活用しよう」です。

4.適性診断を行なおう
 人は実際に仕事をしてもらわないと、その適性があるのかどうかは分かりません。1回のの面接程度では如何に大企業の人事担当者だったとしても「外してしまう」ことは良くあるものです。試用期間を設けるとはいっても採用は採用であり、適性が無いからといって簡単に解雇できるものではありません。
 しかし面接を含めた採用活動自体には、経営者の広範な裁量権があります。つまり「・・・企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。(中略)右のように、企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。もとより、企業者は、一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあるから、企業者のこの種の行為が労働者の思想、信条の自由に対して影響を与える可能性がないとはいえないが、法律に別段の定めがない限り、右は企業者の法的に許された行為と解すべきである。また、企業者において、その雇傭する労働者が当該企業の中でその円滑な運営の妨げとなるような行動、態度に出るおそれのある者でないかどうかに大きな関心を抱き、そのために採否決定に先立ってその者の性向、思想等の調査を行なうことは、企業における雇傭関係が、単なる物理的労働力の提供の関係を超えて、一種の継続的な人間関係として相互信頼を要請するところが少なくなく、わが国におけるようにいわゆる終身雇傭制が行なわれている社会では一層そうであることにかんがみるときは、企業活動としての合理性を欠くものということはできない。(以下略)」 三菱樹脂事件 最高裁大(昭和48・12・12)

 このように最高裁判決により企業には採用の自由が保障されているのですから、限られた面接時間の中でも最大限の適性検査を行い、企業にとって「人罪」になる可能性のある人物でないかどうかを真剣に吟味すべきであると考えます。例えば事務系の仕事なら、何か課題文書を与えて10分程度でも実際にパソコンを打ってもらうのがいいでしょう。営業マンの一般常識を重視するなら、簡単な計算や漢字の書き取り、面談のマナー等を試験することが考えられます。また経験を重視する職人さんなら、実際に図面を元に機械操作してもらって、試作してもらうのもいいでしょう。もしコアな業務を託す予定の人物や、少数規模事業所の中でその人に掛かる負荷が大きい場合は、少々コストを掛けででも、性格や行動特性、適性職種などが科学的に判定できる専門適性診断を行なうこともお勧めです。

5.採用シートを有効に活用しよう
 最後に申し上げたいのが、採用シートの活用です。これは面接のとき、採用内定のとき、雇用契約のときに分けて順次使用するのが効果的です。まず面接のときですが、私は最近多くの企業で「健康告知書」や運送関係なら「運転告知書(事故歴などを申告するもの)」を使用されることをご提案しています。このイメージは生命保険に加入するときの告知書と同じで、つまり事前に告知した内容と相違した場合は保険金が出ないように、告知書と採用後の内容に相違があるときは、採用取り消しや解雇を承諾するものです。特に最近は精神疾患など面接時や健康診断だけでは判断できない深刻な症状を採用後に発見することがあります。企業は採用した従業員に対して安全配慮義務という高度な債務を負っています。これは「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場合(ママ)に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。」とされている考え方です。川義事件 最高裁第3小(昭和59.4.10)

 このようなリスクを回避するためにも最大限に告知書を有効に利用したものです。次に採用内定ですが、ここで重視するポイントは採用を決定した意思表示を伝えてから、実際に出社する初日までの間に何か問題が発生した場合です。例えば一旦電話で採用を伝えたが、出社日までの間に、「実はその人物は業界で有名な不良人物だった」というような話が後で分かったとか、提出書類に虚偽記載があることが分かったなどのケースです。このような事態に備えて予めこういうことを想定した「採用内定通知」を発送しておけば、かなりのケースで誤採用を防げます。ただ単に電話で採用を伝えるだけの意思表示よりも有効です。
 そしていよいよ出社初日になって、「雇用契約書」を交わします。絶対に口頭だけで済ませてはいけません。給料の内訳はどうなっているのか、残業はあるのか、退職金はあるのかなど明確に規定しておきたいものです。できれば就業規則を提示することも行ないたい(そのためには就業規則自体があらゆるトラブルに対応できる使える就業規則になっていなければならないが)。また営業秘密や個人情報に関する守秘義務の誓約書や、場合によっては身元保証書を取るのもいいでしょう。義務をはっきりさせると共に、心理的な抑制効果もあります。

※なお上記の採用シートは以下のアドレスに掲示してありますので、ご自由にお使いください。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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