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中小企業経営者もご無関心ではいられない、労使紛争とADR。(H18.11月号) | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

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平成18年1月~12月

中小企業経営者もご無関心ではいられない、労使紛争とADR。(H18.11月号)

中小企業経営者もご無関心ではいられない、労使紛争とADR。(H18.11月号)

1.裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律(ADR法)が平成19年4月1日から施行されます。

①ADRとは一体なに?
 裁判外紛争手続き(略してADR)は、「訴訟手続きによらず民事上の紛争を解決しようとする当事者のために、公正な第三者が関与して、話し合いにより解決を図る手続き」ということができます。

②ADRの特徴(裁判との違い)
 紛争の解決方法に裁判制度が良く知られていますが、ADRについてはまだまだ企業や国民に認知されていないのが実情です。両者には以下のような違いが見られます。

手続き: ADR⇒簡単。本人でもできる。  裁判⇒複雑、難しい。弁護士が必要。
手続き開始の相手の同意: ADR⇒双方の同意が必要。片方が応じなければ開催されない。裁判⇒不要。一方的に訴権を行使。
費用: ADR⇒安価。無料もある。 裁判⇒裁判費用、弁護士費用がかかる。
内容: ADR⇒当事者の合意を重視。厳格に法令適用せず、話合いで解決。  裁判⇒法令を適用して厳格に勝ち負けを判断
する対決型。
審理内容、結果の公開性: ADR⇒非公開で審議。記録も非公開。他人に知られず、解決したい場合向き。

裁判⇒審理内容は公開され、記録も公開。公の場で主張をしたい場合、白黒をはっきりさせたい場合向き。
速さ: ADR⇒迅速、スピーディ。 裁判⇒一般的に判決まで時間がかかる。
強制力: ADR⇒原則的になし。あっせん案を受けるかどうかも自由。  裁判⇒判決には強制執行など強制力が伴う。拒否できない。

③ADRの拡がり
 ADRはこれまで裁判所で行う民事調停が多くを占めてきましたが、今後は民間型ADRが増えてゆくものと思われます。
また従来、法律行為の代理は弁護士に限定されていましたが、一定の要件の元、司法書士・弁理士・社会保険労務士・土地家屋調査士にも代理権が付与されることとなっています。
 また本年10月から「法テラス」と呼ばれる司法支援センターが開設されています。これは国民からの紛争に対して、適切な関係機関を紹介することを主業務としており、ここからも、今まで泣き寝入りしていた人が敷居の高い裁判を選択せずに、ADRの利用を選択する可能性があります。

④ADRの法的効果
 ADRは仮に不調に終わっても申請時にさかのぼって、時効の中断の効果があり、終了後1ヶ月以内に訴訟手続きに移行する
ことも可能です。またADRによって、一旦訴訟を中止することもできます。和解できれば民法上の和解の効力があります。

2.労働分野のADR(個別労働紛争の解決の促進に関する法律)

①激増する個別労使紛争とその背景
 ここ近年、個別労使紛争が右肩上がりで増加しており、裁判や労基署による解決だけでは対応できなくなっています。こと労働分野においては、本年4月より裁判所による労働審判制度という、労働分野に特化した独自の枠組みが作られているほどです。
その背景としては日本的雇用慣行の崩壊や、労働組合の弱体化など諸要因が挙げられますが、私は中小経営者の労働法への理解不足に対して、労働者の情報武装化にあると考えています。特にインターネットの普及の影響が大きく、解雇でも、残業代でも検索ワードを入力すれば、即時に大量の情報収集が可能な時代です。中小経営者が情報化した労働者に適応しきれていないのです。

②個別労使紛争に対するADR
 現在、労働ADRに関して利用されている機関は、行政型ADRである労働局と地方労働委員会などがありますが、来年4月以降は民間のあっせん機関も登場します。その中でも労働局が行う無料の「紛争調整委員会」によるあっせんは、平成13年10月から利用されており、今後も増大してゆくものと思われます。ここで対象となる紛争とは
(1)解雇・配転・出向・雇止め・降格・労働条件不利益変更等の労働条件に関する紛争
(2)セクシャルハラスメント、いじめ等職場環境に関する紛争
(3)会社分割による労働契約の継承、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争
(4)その他、研修費の返還、会社所有物の破損による損害賠償をめぐる紛争等です。
また対象とならない紛争は、
(1)労働組合と事業主間の紛争や労働者間の紛争または労働組合が関わっている紛争
(2)裁判中もしくは確定判決の出ている紛争
(3)明らかに労働基準法違反など強行法規に反する紛争
(4)募集、採用に関する紛争です。

③労使紛争は他の紛争とは違い、毎日顔を合わせて協働関係にあった者同士の紛争であり、人間模様が色濃く出ます。裁判のように白黒決着をつければいいというものではありません。やはり労使紛争が大きくなる前に、未然に防止することが重要です。そのための施策は紙面の都合上詳述できませんが、労務は算数や理屈の世界で動いているのではなく、感情や心理学の世界で動いているという基本を忘れないことが大切です。
 またどうしても紛争が発生し、当事者同士で解決が困難であり裁判以外で円満に解決を図りたいときは、労働者からだけでなく、
事業主の方から斡旋申請をかけて解決方法もあります。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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