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年の瀬の、うそのような本当の話。~最近の労使トラブル事情~ (H19.12月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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平成19年1月~12月

年の瀬の、うそのような本当の話。~最近の労使トラブル事情~ (H19.12月号)

年の瀬の、うそのような本当の話。~最近の労使トラブル事情~ (H19.12月号)

A社は30人の建設業である。本社の事務は社長の奥さんとパートの女性社員の2名で切り盛りしている。10時始業で16時が終業時間となっているのだが、終業時刻の10分前になると着替えなど帰り支度を始め出すのが慣習化されていた。
最近更に1名補助パートを雇ったのだが、その者への影響もあることから、奥さんが2人に注意した。「16時までは仕事時間だからきちんと仕事して、16時以降
に着替えをしてね」。そうすると女性社員がこう反論して来た。「16時までいるんだから、問題ないじゃないですか。
もしそうするなら、10時前に掛かってきた電話には出ません!」。奥さんはただあんぐりとするばかりだった。

B社は20人のプラスチック成型業である。求人募集で未成年の男性がやって来た。しかし入社早々から欠勤しがちであり、理由を尋ねても「気分が悪いから」と。少し強く注意したら、かえって反抗的になり、無断欠勤を繰り返すようになった。
しかも仕事中にたびたび私用の携帯電話で機械の前を離れ、多い日で20回にも及ぶことがあった。現場からも事務員からも総スカンで、3ヶ月目に社長の堪忍袋の尾が切れ、解雇通告した。
彼はその翌日に労基署へ申告し、会社は呼び出し。解雇予告がないとして、30日分の予告手当を支払う羽目になった。一体この3ヶ月は何だったのか、釈然としない社長がいた。

 C社は運送業を営む10名の会社で、ドライバー以外は配車係と2名の女性事務員である。母子家庭ということもあり、何かと子供の都合で休んだり、早退することがあったが、社長は特に皆勤手当をカットしたり、欠勤控除したりはしなかった。
ある日、その2名の事務員が労基署へ駆け込み、残業代が支払われていないと訴えた。しかし賃金時効請求権のある2年間目いっぱい遡っても、僅か1万円程度の金額だった。それに対して、会社が恩恵的に控除しなかった金額はそれを遥かに上回る。
なんとまあ、それはそれで棚に上げてそこまで言うかと、社長は肩を落とした。

 D社はレンタカー業務を営む20名の会社であるが、支店は全国規模であり、各支店には本社から管理者が赴任し、かなりの裁量を得て業務を遂行していた。
あるとき経理担当者より報告があり、どうもある支店の幹部H氏が金銭横領している疑いが強まった。密かに内部調査を行い、それが事実であることが判明したのだが、発見が早かったため、被害額は60万円で何とか押さえることが出来た。
会社はその処分をどうするか苦慮したが、穏便に退職願を受理することで不問に付するかに見えた。ところがしばらくして合同労組○○ユニオンと名乗る数名の人物が会社を訪れ、団体交渉を要求してきた。その内容は残業代が支払われていないとのことだった。
会社はH氏は管理監督者として支払いを拒否したが、労組は執拗に金銭を要求してくる。結局400万円もの解決金を支払うことで、決着せざるを得なくなった。会社としては刑事事件にもせず、懲戒解雇もせず、感謝されてもいいくらいだと思っていただけに、H氏の窮鼠を噛むような行動にただただ歯噛みするしかなかった。

 E社はビル清掃を請負う10名の会社である。ある日現場部長のN氏が自らが担当している部署を独立させて、会社にマージンを支払う契約をしないかと持ちかけてきた。その方が会社にとっても儲かるはずだと企画書を出して来たのだった。
社長はそんな勝手な要求は承諾することが出来ず、当然断った。そうするとN氏は退職願を出し、部下を引き連れて競業会社を設立する目的で、在職中から自らの営業活動を行い、実際に会社の得意先を奪取もした。
会社としてはそのような非違行為を黙認することは出来なかったため、受理した退職願を撤回し、懲戒解雇処分とした。するとしばらくして弁護士から内容証明郵便が届いた。不当解雇だと主張しているのだ。
N氏はもともと自らの独立のために会社を辞めるはずではなかったのか。この事案は現在も労働審判において係争中である。

 F社は金属加工業で、30名の社員がいる。町工場の典型だったが、新卒採用も積極的に行っており、高卒で女性の事務員を採用した。ある日の夕刻、社長は急ぎの対応を迫られる書類を捜していたが、所在がわからなかった。
その事務員が知っていると思われたが、既に帰宅しており、翌朝その事務員が出社してくると直ぐに社長が尋ねた。「○○さん、あの書類はどこにあるの」。そうするとまだ高校を卒業したばかりのその女性事務員は社長にこう言ったのである。「私の契約は9時からになっているはずです。仕事の話は9時からにしてください」。社長が尋ねたのは8時45分。うーん、社長は二の句が出なかった。

 実はこれらはすべて最近起きた本当にあった事案です。皆さんはどのようにお感じになられますか?こういったことは対岸の火事ではありません。いつ、あなたの会社で現実に起こらないとも限りません。労務管理はますます難しくなってゆくように思われ、その要因は複雑かつ複合的に絡み合って、解決策を困難にしています。そこには、今までのやり方考え方が通用しなくなった、もがき苦しむ中小企業経営者の姿があります。
 そこで来年は少しでも経営者の皆様の労務管理が向上する対応策を具体的に考えてゆきたいと思います。今年もあと少し、何事もありませんに・・・・・・・・。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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