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従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき(H25.5月号) | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

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平成25年1月~12月

従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき(H25.5月号)

従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき
~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~

よく従業員の何らか非違行為に対して、懲戒処分を行いたいとのご相談を受けることがあります。ただ、一歩間違うと、逆に反撃されるリスクが高いのも懲戒処分です。
そこで今回は、懲戒処分を行うにあたり、留意しておきべき基本的な知識について解説したいと思います。なお、ここでは懲戒といっていますが、制裁と同義とお考えください。

1.懲戒処分は人事権では行えない

使用者は労働契約の本質的要素として、従業員を指揮監督したりするする人事権、指揮命令権を固有に有しています。つまり、特に就業規則や労働契約書にその記載が無くとも、指揮命令を行うことが可能なのです。しかし懲戒処分に関しては、使用者の固有の権利とされておりません。あらかじめ周知された就業規則において、懲戒の種類や事由を明記しておくことが求められています。これを罪刑法定主義といい、記載されている範囲でしか、懲戒権を行使することはできません(これを限定列挙という)。

2.懲戒処分の有効要件

懲戒処分が有効かどうかは労働契約法15条に基づいて判断されますが、具体的には、

(1)就業規則に懲戒の根拠規定があること
(2)懲戒に値する非違行為があること
(3)上記2要件を満たしたとしても、社会的に相当であること

が必要とされています。(3)は少し分かりにくいですが、要するに、いきなり懲戒処分に処するのは酷でないかとか、その処分は厳しすぎるのではないか、行為と処分内容が釣り合っているかといったようなことです。この相当性を判断するのが実務上、非常に専門家であっても迷います。

また、これらに付随して、懲戒処分を有効ならしめるためには、以下のような要素を事前チェックしておくことも必要です。

ア.処分不遡及の原則

先ほども申し上げましたが、懲戒処分を行うには、根拠規定が必要ですが、行われた非違行為は規定の後に行われていることが必要です。つまり先に非違行為があって、後から作った規定で処罰することはできません。

イ.二重処罰の禁止

一事不再理の原則ともいいますが、要するに一度懲戒処分が確定した事実について、再度懲戒処分を行うことはできないということです。また一つの非違行為に対して、複数の処罰(減給と懲戒解雇とか)を行うこともできません。

ウ.適正手続きの原則

よく懲戒規定の中に、聴聞会を開くとか弁明の機会を付与するとか、懲戒処分を行う前の手続き要件を定めているケースがありますが、そのように記載されている以上、その手続きは省略せず、必ず行わなければなりません。ですから、そのような手続きが行えない規模であるなら、最初から書かないことです。
ただ、実務上は記載しなくても、一応、弁明の機会を与えることは必要だと考えています。

エ.平等取扱いの原則

過去の事例、他の従業員との比較において、ことさら当該従業員を不平等に取扱いしていないかということです。

オ.長期間経過後の処罰の禁止

例えば確かに懲戒処分が行われても仕方の無い事由があったとしても、それを長期間放置ししたがために(1)その間企業秩序が回復している、(2)もう懲戒処分は行われないだろうと従業員が期待するのもやむを得ない、ようなケースでは、やはり懲戒処分を行うことは困難でしょう。

カ.処分事由の追加禁止

これは懲戒処分当時に認識していなかった事実、或いは指摘していなかった事実を後になってその懲戒処分の根拠事実に加えることはできないということです。後出しジャンケンの禁止とも言えるかもしれません。ですから、指摘できる非違行為は全て出し切る必要があります。

キ.責任能力の有無

従業員に心身喪失状態などにより責任能力がないとして懲戒処分が否定されるケースはかなり少ないと思われますが、最近多くなっているメンタル不調者への懲戒処分は少し留意した方がいいでしょう。例えば、欠勤が多いという事由があったとしても、それがメンタル不調に由来するものではないかを検討してみることなどが留意点として考えられます。

ク.解雇予告の原則

これは懲戒処分による解雇であったとしても、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けていない限り、30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当は必要になります。ただ、除外認定を受けないと、懲戒処分としての解雇(諭旨解雇や懲戒解雇)が行えないわけではありません。

以下次号にて。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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