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就業規則はきちんと周知しよう | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

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平成26年1月~12月

就業規則はきちんと周知しよう

~隠れている就業規則は無効になります!~
●就業規則はきちんと周知しよう

皆様の会社では就業規則がおありでしょうか。労働基準法によると常時10人以上の労働者を使用する事業主は就業規則を作成し、労働基準監督署に届出る義務を課しています(労基法第89条)。そういうこともあって、形式的には作成しておられる会社もありますが、その存在を労働者が知らないということが意外に多いのです。その訳を推察すると、実態に合っていないので開示できないとか、権利行使を助長するのを嫌がるとか、周知する義務があるのを知らないとか、或いはそもそも開示意識が欠けているからだと思われます。
でも、きちんと就業規則を作りこんでおけば、いざという時にその威力を発揮してくれます。つまり労使トラブルが起こったときに、会社を助けてくれるのです。そのためには労働者に就業規則が周知されていないと全く意味を成しません。あってもなかったことになってしまうのです。

ところで、そもそも就業規則とは法的にどのような性格を付与されたものなのでしょうか?すこし難しいですが、最高裁判所は以下のように意味づけています。
「就業規則は当該事業所内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、当該事業所の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。」(最大判 昭和43.12.25)

かなり古い判決ですが、この考え方は現在も維持されています。語弊を恐れずごく簡単に言うと、「就業規則はその会社の法律になる。法律だから、個々の従業員が同意や理解までは必要ない」と言えます。法律とはそういうもので、知らないから私は関係ないということは言えず、知らない者が悪い、と言えるくらいです。

就業規則に対するこういった考え方は長らく判例法理という一般には知られない世界で受け継がれてきたのですが、平成20年に施行された労働契約法にその考え方が条文として、盛り込まれました。
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。(以下略)」(労働契約法第7条)

ここで大切なのは、就業規則に効力を持たせるファクターは、たった二つしかないということなのです。一つが「合理的な労働条件が定められていること」、もう一つが「労働者に周知させていたこと」なのです。ここで周知が出てきました。一般的に前者の「合理性」が否定されることはまずありません。問題は後者、つまり「周知」していたかどうか、なのです。

この「周知」とは、実質的周知で足りるとされています。労基法では第106条(施行規則52条の2)において、(1)常時各作業所の見やすい場所へ掲示または備え付ける、(2)労働者に書面を交付する、(3)磁気ディスク等に記録した内容を常時確認できる機器を設置する、という方法を例示していますが、しかしこれに囚われることなく、実際には「その事業場の労働者の大半がその就業規則の内容を知り、又は知ることができる状態に置かれていれば足り、当該労働者が実際に就業規則の内容を知ったかどうかは問わない」(東京地判 平成21.10.28)とされているのです。つまり「ウチの会社の就業規則はここに置いてありますので、自由に見て頂いて結構です」と、アナウンスするだけでも良いのです。

冒頭あたりで、「あっても、なかったことになる」と書きましたが、周知されていないがために、その存在を全否定されることがあります。裁判所は辛辣に言います。「確かに被告は就業規則案を作成し、これを労働組合に提示したことが認められる。しかし(中略)少なくとも原告らに対し、拘束力を有する就業規則が制定され、同規則が周知されていたとは認めがたい。(中略)被告による給与体系の見直し及び就業規則に関しては、少なくとも原告らとの間においては効力を有しているとは認められない」(大阪地判 平成24.2.10)。

このようなことなならないよう、せっかく作成した就業規則は、きちんと労働者に周知しましょう。そのための私が考えるポイントは以下の通りです。
1.作成又は変更すれば、簡単でもよいから説明会を開く
2.説明会が開催できない事情があれば、ミーティングや朝礼などの場で、就業規則の存在を伝える
3.常に見ようと思えば見ることの出来る方法で備え付ける(休憩室に吊っておくとか、タイムカードの横に立て掛けておくなど。間違っても一般の労働者が自由に出入りできない社長室に置いてあるとか、管理者の机の中に締まってあるというようなことがないように)
4.10人以上のであれば、労基署へ届出しておく(但し、労基署への届出行為自体は、効力発生要件ではない)
5.これらは、作業場単位で行う(会社単位ではない)
6.新規採用時には、雇用契約書に「この契約書に記載のない事項に関しては、就業規則による」などという文言を入れておき、「この規則というのはどこどこに置いてありますから、自由に見てください」と説明しておく

ただし、周知義務があるとはいえ、社内文書であることは確かですから、無断持ち出しやコピーを禁止することは構いません。

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

 

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