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迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その3(2019.10月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2019年1月~12月

迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その3(2019.10月号)

●迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その3(2019.10月号)

前回において、以下の図を提示いたしました。


   A職務の内容    B職務の内容・配置の変更の範囲    Cその他の事情
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1   同じ          同じ               なし     ⇒   均等待遇(差別的取り扱い禁止)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2   同じ          異なる              ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3   異なる         同じ               ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4   異なる         異なる             (なし)    ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)

                                                              ↑ パート・有期雇用労働法の規制の対象
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
5   同じ          異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり   ↓ パート・有期雇用労働法の規制の対象外
6   異なる         同じ               あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり
7   異なる         異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない
     

上表の1から4のパターンは、確実に有期パート雇用法の規制対象になります。特に1のパターンは、正社員と非正規社員のあらゆる待遇を同じにしなければならず、非常に危険です。
もし、正社員と非正規社員の待遇差を直ぐには埋められないのであれば、上表の5、6、7の考え方を労務管理に反映させて運用するしかありません。つまり「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みともいう)」のいずれかを正社員と非正規社員で同じにしない(つまり違いを設ける)ようにし、かつ、「その他の事情」をできるだけ盛り込むことが重要となります。


更に理解を深めるために上表の横軸にある 「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」について詳しく解説します。以下、この三つを総称して「3要素」と呼びます。

1.「職務の内容」とは(第一要素)


これは「業務の内容」と「その業務に伴う責任の程度」に分解できます。「業務の内容」とは一般的に職種と言われている概念のことです。営業とか、一般事務とか言われるものです。これが正社員と非正規社員で同じかどうかは、「厚労省編職業分類」の細分類が同じかどうかで判断されます。この細分類が違っていれば、この時点で同じ職務とは言えなくなります。

また細目が同じであっても、職種に内在する中核的業務が異なれば、同じとはなりません。例えば店頭販売の正社員とパートを比較した場合、

レジ打ちと商品陳列は双方共に行うが、商品発注は正社員しか行わないといった場合、同じ販売職であっても、中核的業務に違いがあり、同一とはみなされないことになります。


また業務内容が同じであったとしても、それがある一時期のことであり、定年まで雇用期間の全てに渉って同じでなければ相違があることになります。例えば、新人社員に現場業務を体験させるため、一時的にアルバイトと同じ業務内容になるようなケースです。


ここまでの検討で「業務の内容」を見てきて、同一である、つまり職種細目も同じ、中核的業務も同じ、雇用期間の全期間にわたっても同じであっても、直ちに同一となみなされず、さらに次のステップである「その業務に伴う責任の程度」を比較して「職務の内容」が同じかどうかを最終的に判断します。


「その業務に伴う責任の程度」には多様な要素があり、例示すると以下のようなものがあります。

(1)単独契約できる可否
(2)管理する部下の数
(3)決裁権限の範囲
(4)ノルマの有無
(5)トラブルや緊急時対応の有無
(6)時間外労働の必要度
(7)成果への責任の度合い


これらの要素に正社員と非正規社員で大きな違いがあれば、「業務の内容」は同じであっても、3要素の一つである「職務の内容」は異なることとなります。つまり第一番目の要素である「職務の内容」が同じかどうかは、

ア.「厚労省編職業分類」の細分類が同じか(同じ職種か)

     ↓
イ. 中核的業務が同じか

     ↓
ウ.雇用期間の全期間にわたって同じか


という順番で同一性を判断することとなります。

2.「職務の内容・配置の変更の範囲」とは(第2要素)


3要素の2つ目で、主に以下の要素で判断されます。

(1)転勤の有無(正社員・非正規社員双方に転勤がある場合でも、正社員は全国転勤、パートはエリア限定転勤であれば同一となならない)
(2)昇進の有無(役職の変化)
(3)昇格の有無(職能資格の変化)
(4)職務内容の変更の有無
(5)キャリア形成の有無(ゼネラリストやスペシャリストへの上昇)
(6)出向・転籍の有無
(7)人事考課の有無
(8)役割の変更の有無(指導・監督・管理・成績連動など)


そしてこれらの要素も、第一要素と同じく、今現在の状態だけで判断するのではなく、将来にわたって変更される可能性も考慮要素になります。そしてこれは確立された慣行や文書化された制度において判断することとなります。


その上で、第一要素である「職務の内容」が同じでも、この第二要素の「職務の内容・配置の変更の範囲」が異なれば同一とはなりません。そしてこれらはあくあmでも同一企業内での比較判断となり、世間との比較はしません。


3.「その他の事情とは」(第三要素)


第一、第二要素に限られない、あらゆる事象が対象となり主に以下のようなものが考えられます。

(1)他の待遇とのバランス(ある待遇差が不合理でも、それを補填するその他の待遇がある場合)
(2)定年後の再雇用    
(3)労使協議の在り方(労使で真摯に話し合って決まっていることかどうか)
(4)正社員登用の有無  
(5)成果・能力・経験・役割の違い
(6)合理的な慣行
(7)残業の有無
(8)所定労働時間の違い(フルタイムか短時間か)
(9)年金や高年齢継続給付の有無
(10)採用の目的 
(11)勤務形態の違い(変形性、裁量労働、テレワーク、兼業)
(12)住居事情(近隣か遠方か)
(13)家族事情(扶養義務の有無)

これからの非正規社員の雇用管理のキモとして、上記第一要素か第二要素に必ず違いを設け、その上で第三要素である「その他の事情」をできるだけ多く取り込むことが肝要になってくるのです。

(以下次号)

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