メニュー

雇用契約書について考える■~最初が肝心、トラブルのない取り決めを~H21.10月号 | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

インフォメーション(過去のメルマガ)

平成21年1月~12月

雇用契約書について考える■~最初が肝心、トラブルのない取り決めを~H21.10月号

雇用契約書について考える■~最初が肝心、トラブルのない取り決めを~

 多くの中小企業で雇用契約書の重要性が過小評価されています。そもそも口頭だけですませ、文書で交わしておられないケースも多くあるのが現状です。そこで今回のテーマは、よく雇い入れ後にトラブルになりやすい事案に絞って、雇用契約書の記載の仕方を考えたいと思います。

1.高い給与で雇ったが期待はずれの場合または既存の従業員より高い給与で雇わざるをえない場合 

 A 高い技術や貴重な経験を買いたいとき・前職の給与の水準を考慮するときなど。
ポイント→基本給水準を上げず、減額・取り外し可能な特別(保障)手当で対応する。

「記載例」
  基本給 20万円  家族手当 2万円  通勤手当 1万円  特別(保障)手当 7万円
  総合計 30万円
    ※特別(保障)手当は下記の職務能力(以下基準という)があることを見込んで、入社より3ヶ月間暫定的に保障し、職能に合わ    せて見直しする。万が一基準を満たさないと会社が判断したときは、これを減額またはカットする。
     (1).・・・・・・
     (2).・・・・・・

 B 特に技術者や銀行や親企業からの転籍者を年俸で雇う場合(年俸の保障を求められた場合)

仮に年俸700万円保障を言われたとすると、
ポイント→初年度は賞与込みで年俸を保証し、次年度からは賞与部分は変動給にする。

「記載例」
  賃 金:基本給30万円  役職手当 10万円  家族手当  1万円  通勤手当2万円
  総合計 43万円
  賞 与:夏期 7月 100万円  冬期 12月 84万円(支払い月は変更することがある)
    ※賞与は入社後1年間はこの金額を保障し、2年目からは会社業績、勤務成績等を総合的に勘案して決定し、諸事情により支給しないこともある。

2.歩合(出来高給)のある従業員を雇う場合

ポイント→力のある営業員でも直ぐに成績を出すのは酷なので、最初の3ヶ月間は安心してもらう意味と、成績が悪い場合は、合理的に減額できる仕組みにする。

「記載例」
  基本給 20万円  営業手当 2万円  歩合手当 3万円
  総合計 25万円
    1)営業手当は時間外手当相当額として支給する。
    2)歩合手当は入社後3ヶ月の間、営業成績にかかわらず定額で支給し、歩合額がこれを上回るときはそれによる。3ヶ月経過後はカットし、営業成績に基づく歩合給に変更する。

3.時間外手当をどうしても超過時間に応じて支給できない場合 

 A 内込み残業代方式
ポイント→基本給の中に何時間分でいくらの残業代が内込みになっているのかを明確にする。

前提条件 月給 45万円  時間外労働時間数  45時間/月  1ヶ月平均160時間とすると

「記載例」
  基本給45万円(基本部分 332,948円、時間外45時間分117,052円)

上記の計算式
①45時間×1.25=56.25時間
②45万円÷(160時間+56.25時間)=@2080.92
③@2080.92×160時間=332,948
④@2080.92×1.25×45時間=117,052円    ③+④=45万円

 B  固定残業代方式(何時間分か)
ポイント→定額手当が時間外手当相当額であることを明記する。

前提条件 1ヶ月平均1所定労働時間160時間とすると 
 
「記載例」
  月給 45万円  営業手当10万円(内5万円を固定残業代とする)
  
上記の計算式
①(45万円+5万円)÷160時間=@3125
②5万円÷(3125×1.25)=12.8時間  12.8時間分までは支払い済みとなる。

 C 年俸制方式(何時間分か)
ポイント→年俸の中に何時間分でいくらの時間外手当が内込みになっているのかを明確にする。

前提条件 年俸額  900万円(月給75万円) 1ヶ月平均160時間  年間残業時間数240時間(20時間/月) 年間休日労働時間数96時間(8時間/月)
(月給75万円の中に20時間分の時間外労働及び8時間分の休日割増分が含まれていることにしたい場合)

「記載例」
  給与:年俸制 今年度年俸額900万円【月給 75万円(基本給612,870円 時間外手当95,761円 休日手当 41,369円)】

上記の計算式
①20時間×1.25=25時間
②8時間×1.35=10.8時間
③75万円÷(160時間+25時間+10.8時間)=@3830.43
④@3830.43×160時間=612,870円
⑤@3830.43×1.25×20時間=95,761円
⑥@3830.43×1.35×8時間=41,369円  ④+⑤+⑥=75万円

4.外勤(営業)職を雇う場合

ポイント→みなし労働時間を適用することをその意味を含めてきちんと説明する。

「記載例」
労働時間:9時00分~18時00分(実働8時間)
   1)みなし労働時間制を採用する。
   みなし労働時間制とは、事業場外労働と事業場内労働の両方がある場合でも、現実の労働時間にかかわりなく前記のみなした労働時間を実労働時間とするものであり、その効果は事後に変更されないものである。

5.試用期間を設ける場合

ポイント→本採用へ移行するための判断基準を明確にする。

「記載例」
試用期間:平成  年  月  日~  年  月  日
    (1)会社の都合によりこの期間を本人へ通知した上で、延長または短縮することがある。
    (2)試用期間中は以下の執務態度を重点的に考慮の上、本採用への移行を検討し、会社が以下の項目を満たしていないと判断したときは、本採用しない。
      ①他の社員と仲良く協調する。
      ②分からないことは勝手な判断で行わず、質問する。
      ③忘れる恐れがある場合は、メモする。
      ④間違いがないか見直し、点検をする。
      ⑤上司へ常に連絡、報告、相談をする。

6.期間契約の場合

 A ポイント→今回が最終なのかどうか、更新がある場合は更新基準が明らかかどうか
 
「記載例」
  雇用期間:平成  年  月  日~平成  年  月  日  以下(1)(2)のいずれかに○すること
         (1)本契約をもって最終とする  
        (2)甲は次の各号の全てが充足された場合に限り、乙との労働契約を更新する。更新するときは再度労働条件を見直す。
①就業規則及び付属規程、誓約書を遵守したこと
②常に上司の指示をよく守り他の従業員と協調して職務を遂行したこと
③契約期間中に無断欠勤、遅刻をしていないこと
④懲戒事由に該当する行為がなかったこと
⑤心身ともに健康であって、更新後の契約期間内に、労働契約の本旨に沿った労
務の提供ができると見込まれること
⑥経営上の必要又は天災事変その他これに準ずる事由により余剰員を生じていないこと
⑦担当業務の遂行状況及び進捗状況又はその必要性などから判断して契約更新の必要性があること
⑧その他上記に準ずる事由があること

 B ポイント→契約終了を意味する期間雇用ではなく、一定の労働条件で雇用する期間だけを定め、再度条件を見直したい場合

「記載例」
  雇用期間  平成○年○月○日から平成○年○月○日
      但しこの雇用期間は労働者の退職を制限し、または会社の解雇を制限する雇用期間ではなく、以下の労働条件による雇用期間の定めをいう。

7.限定契約と解されないために

ポイント→私はこれしかやりません、ここでしか働きませんと、わがままを言われないようにする。下の事例だと全般とはどいうことか、雑務にはトイレ掃除もありますとか事前に了解を得ておく。

「記載例」
  職種:一般事務全般及び営業員の補助その他の雑務
       (1)業務の都合により、職種変更、配置転換、転勤を命ずることがある。
       (2)業務上必要ある場合には、勤務日の変更、所定外勤務を命ずる場合がある。

8.限定契約を利用した解除条件の拡大

ポイント→職種変更や場所変更には限定契約の場合、本人の同意がいるが、その限定された職務が遂行できなくなれば自動的に退職となる契約

「記載例」ドライバーの場合
  職種:ドライバーに限定する。
  就業場所:○○(大阪市・・・・・)
  退職:1.自ら退職を申し出て会社が承認したとき(承認日)
      2.無断欠勤が1ヶ月に達したとき(最後の連絡日)
      3.免停になったとき(その日から2週間後)
      4.帰責事由にかかわらず、就業場所○○との取引がなくなった場合(最終取引日より2週間後)

9.特約を付す場合

「記載例」
  特約:1.時間外労働を行うときは、原則として事前に所属長の承認を得るものとし、自らの判断で行わないものとし、これに反する労働は原則として労働時間として参入しない。
      2.退職時に○○職以上の管理職に在る場合、または経営者と一体的な立場にある場合、もしくは○○職にある場合は、「守秘義務及び競業避止に関する誓約書」を締結する。
      3.会社は法令の改正、経済状況、社会情勢、会社状況等によりやむを得ず就業規則を変更して、労働条件を変更(引き下げる)ことがある。
      4.今後の労働条件の変更は有利不利にかかわらず、就業規則の変更による。

10.通知書ではなく、雇用契約書

ポイント→通知書ではなく、双方が記名押印する雇用契約書にし、最初に納得して来てもらった確認の証を残す
      必ず、最後に「上記、お互いに確認、承諾したことの証として各々1通保管する」などと記載し、労働者は署名押印、使用者は署名押印または記名押印

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

前のページにもどる

お問い合わせ