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合同労組がやって来たら・・・・・その対策を考える その2 H22.5月号 | 西村社会保険労務士事務所|なにわ式賃金研究所

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平成22年1月~12月

合同労組がやって来たら・・・・・その対策を考える その2 H22.5月号

合同労組がやって来たら・・・・・その対策を考える その2

 前回はその1として、労働組合の性格や団体交渉に臨むに当たっての最初の心構えを主にお話いたしました。今回は後編です。

1.不当労働行為について

 よく組合は不当労働行為という一般には聞きなれない言葉を多発してきます。最初の結成通知書にも必ずと言っていいほど、これに触れています。一体、不当労働行為とは何でしょうか。一言で言えば、使用者が労働組合または組合員に対して行ってはならない行為のことで、労働組合法の中に明記されています。その内容は、主に以下の5類型で、あからさまにこれらを行うと、使用者の立場を悪くしますので、注意が必要です。

 ①不利益取扱の禁止
(労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入したこと、労働委員会に対し不当労働行為の申し立てをしたことなどに対して不利益な取扱をすること)
 ②黄犬契約
(労働者が労働組合に加入しないことを雇用条件とすること、労働者が労働組合から脱退することを雇用条件とすること)
 ③団交拒否
(交渉に応じないこと、誠実に対応しないことなど)
 ④支配加入
(使用者が労働組合の運営を支配すること 使用者が労働組合の運営に介入することなど)
 ⑤経費援助
(労働組合の運営のために経費の支払いにつき経理上の援助を与えること)

 しかし使用者はいたずらに不当労働行為を恐れる必要はありません。なぜなら不当労働行為は、使用者が不当労働行為を行い、労働組合又は労働者が、労働委員会に不当労働行為の救済申立てをし、労働委員会が、その申立てに基づいて審査を行い、不当労働行為と認めなければ、不当労働行為は成立しないからです。つまり不当労働行為を認定するのは、あくまでも労働委員会であって、組合ではないのです。
 しかも労働委員会は命令を下せても、債務名義として執行権限はありません。命令に不服なら司法手続き(行政訴訟)に出ることも可能であり、命令が確定するまでは制裁(刑罰)は課せられないからです。つまり刑罰が課されるのは司法による確定判決で違反が確定してからのことです。
 また労働委員会の不当労働行為審査は、ほぼ裁判と同様の流れによって行われるため、実は申立てる組合側にも相当の負担がかかり、審理も近年は短縮傾向にあるとはいえ、それでも長期間かかるのです。
 明らかな不当労働行為を行うことは確かに駄目ですが、解釈や程度に関する見解の相違はあるのが普通です。過度に萎縮する必要はありません。

2.労働協約について

 前号でも組合との文書には簡単にサインしてはいけないと申しました。双方が署名または記名押印すると、その文書は労働協約になるのですが、この労働協約とは法的に強烈な権能を持っています。主なものは、
 ①労働協約は就業規則や個別契約を上回る効力がある
 ②4分の3以上の加入員がいる組合と締結した協約は、それ以外の非組合員にも効力が及ぶ
 ③不利益な労働条件の変更でも原則的に組合員全員に効力が及ぶ(個別の反対者にも効力が及ぶ)

 注意を要するのは、同意約款または協議約款と呼ばれる労働協約の条項です。例えば文章中に、「組合員の労働条件に関することについては、今後組合の同意を得て行わなければならない」などの文言がさらっと入っているのです。これは同意約款の例です。このような規定を使用者は結ぶべきではありません。なぜなら今後何をするにしても、組合の同意がなければできないことになってしまうからです。
 また特に要注意なのが、経営権にかかわる事項を安易な労働協約の締結によって、使用者の専権事項から手放すことです。例えば、次のような事項に関してです。
  ①役員の任免、経営方針や計画、設備投資、M&Aなど
  ②業務命令に関すること(残業、異動、指揮命令など)
  ③人事権に関すること(採用、人事考課、役職任免など)
  ④施設管理権に抵触すること(事務所の使用、掲示板の設置など)  
  ⑤職務専念義務に抵触すること(就業時間中の電話の収受、活動など) 
  ⑥財産権の侵害にあたること(車両や機械の支配管理など)

 大抵、労働協約は組合の方から提示してきますが、それをまともに1文1文校正して、要求するのは関心しません。こちらから作り直しの逆提案をするくらいの手間が必要です。書き直すことで、 部分訂正ではやり難い不利な条項の削除や有利な条項の挿入をし易くなるからです。

3.対応の仕方

 はっきり言いまして、方程式はありません。ケースバイケースです。しかし大まかに退職後と在職中では対応が違います。

① 離職後の駆け込みの場合

 一般的には、解決の道筋が立てやすいケースです。結論から言いますと、いくらの解決金で手が打てるか、の交渉になります。組合の立場で考えてみましょう。一人で駆け込んできた組合員です。今後継続して組合員の拡大や組合費の徴収が期待できません。彼らも慈善団体ではありません。するとインセンティヴがないと、とても交渉できないでしょう。事案にもよりますが、数か月分の金銭で妥結できれば良しとすべきで、清算条項を入れた労働協約を締結することにより、事後の蒸し返しもありません。

② 在職中に加入した場合

 悩ましいケースです。退職を前提に解決金を支払って上記のように関係を清算できればいいのですが、在職中の場合は、その従業員が在籍する限り、その従業員の労働条件について、団体交渉を行ってゆく必要があり、場合によっては他の従業員にも波及することも起こりえます。これといった妙案はありませんが、おおよそ次のような対応が考えられます。
 1)鳴くまで待とうホトトギス戦術
   辛抱強く交渉し、その従業員が自発的に退職するまたは組合を脱退するのを待つ。
 2)柳に風戦術
   過度な頻度や内容の要求が度々繰りかえされる場合、その都度反応を返さない。こちらが反応することで、相手の行動を強化することもある。
 3)徹底抗戦戦術
   堂々と論陣を張る。場合によっては解雇権も発動する。ある程度話し合いができる土壌でないと、難しいか。
 4)共同歩調戦術
   実は組合も依頼者である従業員の面前では、メンツがあり、妥協しにくい面があります。話の出来る組合役員と場外で、腹を割って話し合えれば、むしろ組合
が従業員を説得してくれることもあり得る。また組合役員の顔をつぶさないような配慮が必要なケースもある。

 と、ここまで企業側の立場に立ってお話してきましたが、実は多くのトラブル事案では、会社もしくは経営者にもそれなりのトラブルの芽があることがほとんどです。これに関しては、このメルマガの昨年12月号、「経営者の危うい感覚 それはトラブルのモトです」において触れておりますので割愛します。くれぐれも無用なトラブルを起こさない労務管理が求められます。
 本来、味方であるはずの従業員と無用な敵対関係に陥るのは、時間的にも、労力的にも、金銭的にも、精神的にも疲弊する、全く無駄なことだからです。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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