賞与・退職金を考える
賞与は小企業にとって重大なインセンティブ(刺激)に
小企業では一人一人の社員の「あと一踏ん張り」が重要です。それは営業マンが「もうあと一軒寄って帰ろう」というような些細な事です。しかしそれがあるか ないかだけで劇的に差がつくものです。組織力やネームバリューに欠ける小企業はこのマンパワーを引き出せるかどうかで決まると言っても過言ではない。こう いう人が一人居るだけでも違うのです。超出来る少数の社員が、その他大勢を支えている例はよくある事です。そんなとき一番怖いのが「やってもやらなくても 同じじゃないか」と思われる事です。そう思われないためには賞与は絶対に必要です。
社長の評価を一番反映しやすい
小企業の会社では、ほとんどの社長がその裁量で月給を決めています。きちんとした評価基準や賃金表を作っている会社は皆無といってもよい。でもあながちそ れがいい加減かといえば、そうでもないのが不思議です。従業員の働きを我が目で見ている小企業の社長は、世間相場を勘案しながらも、自社で出せる原資の中 からその能力や頑張りに対して、絶妙なバランス感覚を発揮して差別化しているものなのです。しかし多くの小企業の社長は、その評価軸に年齢や家族構成、勤続年数といったいわば仕事と直接関係のない「しがらみ」を考慮している事が多いのです。ところが賞与は特定期間の会社に対する貢献度のみを評価軸にすればよい。つまり「しがらみ」は一切考慮する必要がないのです。社長が「おれはこいつには辞めて欲しくない」とか「この頑張りに報いてやりたい」といった思い を素直に表現できるのが賞与です。給料だとなかなか大胆な差別化は出来ませんが、賞与なら可能です。ただそのとき、単に明細を渡すだけではダメ。「おれはお前のここを評価した」という意思表示が必要です。
賃金の肥大化を防ぐ
本来なら月給制度自体を見直して、そこに能力や成果を反映できれば一番いいのかも分りません。しかし多くの企業で制度を導入しても、運用で破綻してしまう事がよくあります。けれども賞与は毎年見直す事が出来ます。つまり洗い替えが出来るのです。いくら月給で評価をしても、一度昇給すると今度は下げる事が出来ません。むしろありがたみはそのとき一瞬で、すぐに既得権化してしまいます。社長の思いが陳腐化して当たり前状態になってしまうのです。でも洗い替えする賞与ならその心配はありません。また基本的には利益の中から配分するため、人件費が過大になって行く事もありません。
退職金の制度設計
今後、日本経済の担い手であった「団塊の世代」が定年期を迎えていますが、定年が60歳のままだとすれば、今後全国的に大量の定年退職者が発生することに なります。これは退職金制度のある中小企業にとって、きわめて深刻な問題です。なぜなら今まで30年とか40年勤続で定年を迎える従業員を送り出すという ことは、有史以来なかったことだからです。今まであまり例のなかった「定年退職」が急増し、企業にとって多額の満額退職金の支払が目前の課題となりつつあ るのです。しかし現状は退職金制度や支払準備について未整備の企業が多く、このまま放置すれば退職金倒産という事態も生じかねない危険な状況にあるので す。しかしだからといって、一方的に不利益に規定を変更することは許されていません。このことで裁判になっても、まず勝ち目はありません。
退職金(企業年金)改革の案内(メニュー)
①退職金規程の分析・解説
将来要支給額、時期、水準等の分析を行います。
②適格退職年金規程、決算書の分析・解説
適年決算書から読み取る現状を解説します。
③新方針の検討
今後退職金をどうして行くのか、方向性を決めます。
④新退職金制度の設計
制度として残す場合は新しい支給の仕組みを設計します。
⑤新積立ファンドの設定
新制度を支える適した外部積立て商品を提案します。
⑥移行シミュレーション
新制度で将来どうなるのかを検討します。
⑦新退職金規程の作成
新しいルールを文書でまとめます。
⑧従業員への説明
同意を得ながら新しいルールを従業員に説明します。
⑨新規程の労働基準監督署への届出
旧規定を廃止し、新規定を確定させます。
⑩アフターフォロー
導入後の運用指導を行います。
かつて退職金規程を作った会社は要注意!!
~退職金制度(特に適年)のある会社は資金繰り悪化の可能性大~
今静かに顕在化しようとしている経営問題があります。今後社会的に大問題になることは必定で、最悪、倒産もありうるという怖い話です。それは退職金の話です。
私のように賃金コンサルをしておりますと、多くの退職金規定を拝見する機会がありますが、その多くは最近作成されたものではなく、高度成長期やバブル期に作られたものがほとんどです。そしてその支給水準は、企業規模から言って過大なもの(定年時に2千万とか)が結構見受けられます。しかし、今まで中小企 業の多くは長期勤続者を定年退職で送り出した事がないため、この問題があまり顕在化することはありませんでした。ところが団塊の世代が5定年期を迎え、今後定年退職者が続々と発生する従業員構成の会社があります。過大とまでいえない1000万出る規定だとしても、2人発生すれば、2000万が飛んでゆきま す。これに対する備えは出来ているのでしょうか。生保会社で企業年金(以下適年という)に加入し、積み立てているから安心している会社があります。しかし 毎年送られてくる生保からの決算書をじっくりご覧になっている会社が一体どれくらいあるでしょう。そこに年々、莫大な積立不足金が発生している事実をご存 知でしょうか。しかもこの適年は平成24年3月に廃止されます。企業は退職金を支給する規定だけが残り、積立ファンドを失ってしまうのです。しかも追い討 ちをかけるように、退職給与引当金制度が廃止されたため、これを計上していた中小企業は今後数年かけて、益金に繰り入れなければなりません。不要な税金が 毎年発生する事を意味します。この問題は、1年先延ばしにすれば、それだけ傷口が拡大すると考えた方が賢明です。とんでもないインフレが来れば話は別ですが。
とにかく退職金規程を持っている会社は、是非一度見直しを検討してください。退職金問題は法的にかなり高度な知識が要求されるため、専門家にご相談される事を強くお勧め致します。
当事務所におきましても、この問題に対して御社に合った解決策をご提案しています。
いいかげんな積立方法
多くの中小企業が退職時の基本給に勤続年数に対して一定の係数を乗じて退職金を計算する方式を採用しています。これは初めて退職金規程を作った頃の高度成 長経済及び終身雇用を前提としてきた時代の産物です。しかし、この「退職時の基本給を基礎とする」という方法はあまりに危険です。この退職時基本給連動方 式は導入すべきではありません。ちなみに勤続20年以上で50歳以上の従業員の定年退職金予想額を試算してみてください。ぞっとする会社があるのではない ですか?
これに気がついて、基本給をあまり上げないよう調整給などに逃げる手を打っていくのが通常ですが、これにも問題があります。辞める時の退職金のためにもっと大切な現在の賃金制度を歪めるというのはまさに本末転倒です。
安直な退職金算定方法
適格退職年金や厚生年金基金を掛けていてもその管理がずさんであったり、生保会社にお任せであったりして、あまり気にしていないか、もしくは知らないことが多い様です。というよりもこれらは制度が複雑すぎて、なんべん説明を聞いても理解できないし、生保の担当者も良く知らなくて、分かっているのは本部の年金数理人だけといった状況です。
特に適格退職年金の導入時には生保会社の勧めるままに加入し、今となってはどうしようもなくなってしまっているケースがあります。しかしこの規程は国税庁から「適格」として承認されているため修正は極めて困難。しかも平成24年3月末日に適年は廃止されるため、何らかの他の外部積立の方策を取らなければ なりません。
また基金にしてもしかりで、業界団体のお付き合いで安易に入ってしまったがためにもう大変。特に平成14年4月から施行されている確定給付 企業年金法では、基金を脱退する時は今までの基金が背負っている過去勤務債務を償却してからでないと、抜けられないことになってしまいました。この額は半端な額ではありません。受給権の保護という観点からなのでしょうが、そこには事業主保護という観点はありません。正に残るも地獄、続けるのも地獄。皆さん は適年にしても基金にしても毎年余分な手数料や積立不足金を正規の保険料(掛け金)とは別個で徴収されているのをご存知ですか。 とにかく制度の整備にしろファンドづくりにしろ、早急に手を打たないと手遅れになるかもしれません。残された時間は非常に少ないのです。 当事務所では適格退職年金に加入されておられる企業に対する新たな積立制度の移行ならびに低成長時代に合った退職金規定への見直しをお手伝い致します。 |