平成17年1月~12月
最近の賃金改定に思うこと~5月号~
●最近の賃金改定に思うこと
果たしてこれで生活できるのか?成果や能力を問う前に・…。
厚生労働省が調査した平成16年の賃金引上げ実態調査がまとまりました。改定額平均は3,751円(改定率は1.3%)となり、8年ぶりに前年を上回ったようです。ちなみにここ20年間の改定状況を図示すると以下の通りです。
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年 + 60年 61年 62年 63年 元年 2年 3年
改定額(円)+ 10,218 9,506 7,988 9,731 12,085 14,199 14,394
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年 + 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
改定額(円) + 12,939 9,711 7,948 7,206 7,245 7,224 6,079
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年 + 11年 12年 13年 14年 15年 16年
改定額(円)+ 4,591 4,177 4,163 3,167 3,064 3,751
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バブル期は1万円以上の昇給があったんだなあって、隔世の感がします。ただ中小企業だけに限定すると、5%位はマイナスして見た方が良いでしょう。この数字を見て皆さんはどのようにお感じになられるでしょうか?
現在、高卒初任給はおおよそ165,000円くらいです。仮にこの5年間の平均約3,500円の昇給を継続した場合、この新人の給与はどうなるのでしょうか?10年勤続して200,000円、20年勤続して235,000円。20年勤続といえば38歳です。普通なら結婚もして、子供をもうけ、住宅ローンも組んでいることでしょう。しかし給与は235,000円です。家族手当など他の手当のアップ分を考えても30万円まで行くかどうか・・・。 こんな給与では現実問題として、子供も生めないし、住宅なんて夢のまた夢です。このように考えると、今40代や50代の中高齢従業員が稼いでいる50万円の給料には、ついぞ到達しないことになります。しかも60歳からもらえるはずの年金は65歳からとなり、社会保障費も年々上がり続けることが確定しています。
成果主義だの能力主義だのといって、昇給額は出した業績や能力の伸長で勝ち取るものという基本的考え自体を否定するつもりはありません。私が賃金設計させて頂く時も、成果給や能力給を提案することはままあります。でもそれは、まず安定した生活が見通せてのことです。最低普通の贅沢ができる生活が保障されてのことだと思うのです。
せめて35歳から40歳くらいまでは世間相場を見ながら、生計費という考えを入れて昇給してゆくことは避けられないと考えます。今、大企業では、年齢給や勤続給を廃止し、ベースアップはおろか定昇も行わないのがトレンドとなりつつありますが、元々水準の違う中小企業はこれを真似してはいけないと思います。そうでないと今後益々採用が困難になる若年者の戦力化は土台から崩れてゆくでしょう。
「40歳以上は成果、能力、役割で稼げ。それまでは最低限普通の生活を保障する。」です。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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