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年金未納問題 H16.5月特別号より | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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年金未納問題 H16.5月特別号より

年金未加入(未納)問題

 連日のように政治家諸氏の国民年金未加入(未納)問題が、報道されております。多少、マスコミの過熱報道という側面もありますが、一部政治家の弁明を聞いていると、釈然としないものを覚えます。何故か収まりが悪いのです。この問題、一体どのように考えればいいのでしょうか。
言うまでもなく公的年金制度は国家の社会保障政策の根幹をなすものです。その基本理念は、強制加入による世代間扶養にあります。この至極当たり前の認識を疑いたくなるコメントが多く出されている事に驚きを禁じ得ません。例えば、「脱税しているわけではない。何か悪い事ですか」といった意味のコメントや、「未納だからといってもそのツケは本人がもらえなくなるだけだから、迷惑はかけてないし、年金財政にも悪影響はない」といったようなコメントです。このようなコメントが、著名な政治家や高級官僚からも聞こえるのです。
もしこのような認識が通用するとしたら、それは任意加入で積立方式の年金制度の場合です。老後の事を考えて(※年金制度は老後だけでなく、障害や遺族保障の機能もある)、今流行りの自己責任によって加入するかどうかを判断し、支払った保険料は自分の固有の権利として運用利回りを付加して積み立てられるものであるならば、その理屈は通るでしょう。しかし日本の年金制度はそうなっていません。20歳以上の収入のある国民が共同連帯して老後に生計の道を絶たれた人たちに対し、現役世代が仕送りをするシステムです。この考え方を世代間扶養といっています。
おそらく保険料を払っている多くの人は、自分の老後のために権利を積み立てている意識の方が強いと思われますが、そうであったとしてもきちっと支払っている人は、結果として多くの引退世代を支えているのです。これは将来自分が年金受給権を得る権利と引き換えに、国の社会保障制度を支える崇高な義務を果たしていることになるのです。
ところが未納ということは、例えその時期が一時のものであったとしても、その期間、老人の生活を支えていなかったことになります。それが社会保障政策を語り、立法する人たちに許される事とは思えません。特に未納が長期にわたる人は、片や立派な事を語りながら、その間の老人の生活をきちっと支払っている人に押し付けていた事になるのです。一般の国民と立法府にいる人間の責任が違います。
年金制度は国の社会保障政策の根幹です。根幹という意味では、安全保障や国税の問題と何ら優劣はありません。現在のように親と同居せず核家族化が進んだ日本で、年金なしで親の生活を支えるとしたら、とても今払っている保険料の額で養えないでしょう。限られた収入の中から、毎月最低でも10数万円も仕送りができるでしょうか。国民の生命と財産を守るということが国家の究極の存在意義としたら、年金制度を始めとする社会保障制度は国家が責任を持って行わなければなりません。誰もが一生に渉って働けない以上、いずれ引退し、収入を絶たれる生活が来るのです。しかもその期間は、平均寿命の伸長と共に長くなっています。
やはり年金制度は早く一元化すべきでしょう。議員年金の恩恵を受ける国会議員が立法し、共済年金を享受する官僚が”対岸の火事の国民年金や厚生年金”を行政するようでは、とても生活観のあるものになるとは思えません。人の命に軽重がない以上、国策として行う年金制度は同じ土俵の上で議論されるべきだと思うのですが・・・。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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