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~安易な請負(委任)契約には要注意を! H16.8月号より
●~安易な請負(委任)契約には要注意を!
社会保険料、消費税が安くなるという甘言だけを聞いてはダメ!!
~安易な請負(委任)契約には要注意を!~
最近、気になる労務管理?をよく見ることがあります。それは従業員の外注化です。つまり今まで社員として扱ってきた従業員や今後採用する従業員を請負とか委任という形にして個人事業主扱いにし、諸経費の圧縮を図り、労働法上の責任を回避しようとするものです。
相手は外観上労働者ではありませんから、社会保険料や労働保険料の会社負担が発生しません。また給与だと消費税の仕入控除が受けられませんが、外注費なら控除対象にすることができ、消費税の削減効果が出ます。社会保険事務や源泉徴収事務も軽減され、災害事故が発生しても補償責任はありません。解雇権濫用法理(自由にクビにできないこと)や安全配慮義務(事前に安全や健康面に注意義務を払うこと)などの法的制約もありません。経営者にとってはすごく都合のいいことばかりのように見えます。
しかし私が見る限り、その実体は他の従業員と何ら変わらないというものがほとんどです。一旦何か重篤な事故(障害とか死亡を伴う業務中災害がほとんど)が発生しますと、その請負(委任)契約のほとんどは、否認される事となります。いくらきちんと請負(委任)契約書を交わしていても、事が起こったら実態で判断されるからです。そこから算定される金額は遡及分に通常の補償分も含めて莫大なものになることがありえます。障害とか死亡を伴う重大災害が発生しますと、いくら最初は形式上の契約書で合意したつもりが、本人や遺族から「実質は労働者である」として無用のトラブルを拡大させることがあり得るのです。
その契約が雇用契約なのか請負(委任)契約なのかは判断基準があり、裁判でも行政でも実態に即して決定します。その判断基準とは以下のようなものです。
1仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
業者なら自分の裁量で仕事の受注を決定する自由をもっています。
2業務遂行上の指揮監督の有無
業者なら基本的にその仕事をどのようなプロセスでやろうと自由です。
3拘束性の有無
業者なら労働時間や就業場所を拘束される事はありません。
4代替性の有無
業者なら受けた仕事を更に外注に出すなど代替性があります。
5報酬の労務対象性
業者なら時間給や日給のような算定方法は普通ありません。
6機械、器具等の負担関係
業者なら仕事の遂行に掛かる設備や経費は自分で負担する事になります。
7報酬の額
業者なら従業員と同等の水準になるとは限りません。
8専属性の有無
業者なら他の事業所と複数契約しようが勝手です。
9その他
その他として、選考過程、報酬からの源泉徴収の状況、労働社会保険の適用状況、就業規則の適用 状況、退職金・福利厚生の利用状況などがあります。
これらを全て満たさないと請負(委任)契約が否定されるというわけではありませんが、非常にハードルが高い事はお分かりいただけるでしょう。契約書さえ交わせば安心というわけではないのです。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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