平成19年1月~12月
中小企業の労務管理の要諦 奥さんを味方につけよう (H19.4月号)
●中小企業の労務管理の要諦 奥さんを味方につけよう (H19.4月号)
1.トラブルに登場する奥さん!
私の仕事は社会保険労務士です。中小企業の労務管理を外部からサポートさせていただいております。その業務の中には、会社と従業員とのトラブルの間に立つことも少なくありません。例えば労災事故が起こったときの会社の対応についてとか、退職(解雇)をめぐることとか、給料の内容(特に残業代)に関することとか色々あります。そんな時最近の傾向として、働いている当事者本人からクレームが来るのではなく、奥さんが旦那に代わって登場されることが多くなっています。実際、当事務所にも委託先として、奥さんからお電話をいただくことが少なくありません。一人の独立した成人男子が、自分の会社のことを奥さんに任せるなんて、ちょっとかっこ悪い、というのが私などの感覚なのですが、実態がそうなっており、無下に対応することもできません。
2.定着が悪いのは奥さんの影響?
中小企業ではどこも人材確保が難しいのと同じように、定着させることも困難なことが少なくありません。私共の事務所では、多くの社員の入退社を管理させてもらっていますが、ほとんどが平成入社であり、10年以上の勤続者ですら長いという感覚です。長期勤続で定年を迎えることは非常に少なく、雇用保険の離職票を作成するときの理由は大半が自己都合退職ですが、その本当の理由は分かりません。ただ思うに、奥さんの影響力もかなりあるのではないかと推測するのです。奥さんが会社と接点をもつのは、給与明細だけ。その明細を見て、「あんた、夜遅くまで仕事してきて手当もつかへんの」「毎年昇給もないけど、一体どうなってんの」なんて会話が交わされ、「住宅ローンと子供の教育費と老後がこのままでは心配、今のうちにもっといいとこ考えたら」とやり込められている旦那を想像します。
3.奥さんを会社の味方にしていれば・・・・
上記のトラブルに登場する奥さん、転職を勧める奥さん。どうしてこういうことになるのでしょうか。
昔の親方(社長)は、中小企業家らしく家族主義的経営をし、子供のことを気にかけるなど、社員の家族にもよく配慮していたものです。
ところが最近の傾向として、そういった古き良き家族主義的経営が希薄になっているように感じられます。所詮、中小企業は給与水準や福利厚生などの労働条件(これらを衛生要因という)で競争に勝てるところは少なく、いかに仕事そのものやメンタルな面(これを動機付け要因という)で勝負していかなければなりません。
先程の1と2に挙げた例でも、会社と奥さんとの信頼関係があれば、こうはならないと思うのです。むしろ旦那に対して、「あんた何ゆうてんの。あんだけいい社長さんやないの。もっとしっかりし。頑張らなあかんで」なんて、味方してくれないでしょうか。奥さんの理解とバックアップなくして、旦那さんの献身的な頑張りは期待できません。
4.奥さんと接点を持とう
そこで提案です。会社と奥さんの接点を給与明細だけの関係から、もっと発展させましょう。
提案その1 時折、給与明細に、感謝の言葉を印刷しておく。「いつも遅くまでありがとうございます」「ご主人の献身的は仕事ぶりには感謝しております」とか
提案その2 勤続3年毎に勤続表彰をし、奥さんを会社に招待して、全社員の前で奥さんの内助の功をねぎらい、金一封と花束を渡す。
提案その3 社員旅行を復活して、家族も招待する。
提案その4 忘年会に奥さんも招待して、壇上に上がってもらい、奥さん一人ひとりに旦那の頑張りを伝え、奥さんに感謝して社長が頭を下げる。
提案その5 奥さんや子供の誕生日、子供の入学、出産、結婚記念日などのイベント日に感謝の手紙と粗品を進呈する。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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