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迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その6!(2020.2月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2020年1月~12月

迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その6!(2020.2月号)

●迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その6(令和2年2月号)

このシリーズの最終回です。


1.格差自体が認められない手当


その代表的なものが「通勤手当」、「食事手当」、「出張旅費」です。これらはいずれも実費弁償的なものであり、いわゆる3要素の「職務の内容」、「人材活用の仕組み」が同じであろうが違いがあろうが関係なく、不支給にすると不合理となってしまうものです。
但し通勤手当の場合、正社員は広範な地域から採用するため上限なし、パートは地域限定のため上限有りとか、或いは正社員は1ヶ月定期実費だが、パートは1日単価×出勤日数などの違いは許容されます。
また、食事手当は、正社員と同様の勤務シフトの場合に不合理とされやすいものであり、短時間パートで社内での食事が必要ないケースは除かれます。

2.リスクの高い手当


3要素のうち第一要素である「職務の内容」が同じであれば不合理となりやすい手当に、「皆勤手当」、「作業手当」、「無事故手当」、「運転手当」、その他安全管理上必要な手当があります。これらは職務との関連性が強いものですので、「人材活用の仕組み」の違いにかかわらず、職務が同一であれば不合理とされる可能性が極めて高い手当です。従って同じ仕事なら同様に付けるか、または廃止して基本給に組み入れる方が安全です。

3.労働時間に比例して差を付けるのは許容される


仮に正社員と非正規社員に同じように支給しなければならないとしても、労働時間に比例して差を付けるのは構いません。例えば正社員の皆勤手当月20日平均で1万円、非正規社員のシフトが月15日であるため、4分の3の7,500円とするような場合です。

4.これから見直しを行うための手順


今後会社内で不合理な待遇格差はないかをまず洗い出し、点検して行くことが求められます。これに関し、厚生労働省が「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」という分厚い冊子を公開し、手順例を示していますが、もっと簡単にできる方法をご紹介します。


(1)まず会社内にあるすべての待遇の中で、正社員と非正規社員に違いのあるものをピップアップします。待遇は賃金だけでなく、福利厚生、教育訓練、休暇、安全衛生などあらゆる待遇が対象となるものです。


(2)ピックアップができたら以下のようなマトリクス表を作り、相違のあった待遇を縦軸に入れ、横軸に社員の種類をもってきて、枠の中にその違いを簡潔に記入します(金額とか、支給のありなし、など)。

         正社員    定年嘱託      有期契約   短時間パート
______|_______|_________|_____ |_________
基本給   |       |         |      |
        経験能力    一律定額      個別契約   個別契約   
______|_______|_________|______|__________ 
昇給    |       |         |      |
       4月定期昇給    なし       不定期    不定期
______|_______|_________|______|__________
家族手当  |       |         |      |
       1人5千円     なし       なし      なし
______|_______|_________|______|__________ 
資格手当  |       |         |      |
        1万円      5千円       1万円     なし
______|_______|_________|______|__________
通勤手当  |       |         |      |
        全額       全額       2万円上限   なし
______|_______|_________|______|__________
賞与    |       |         |      |
        あり       なし        あり     なし
______|_______|_________|______|__________
制服    |       |         |      |
貸与       貸与        貸与     なし
______|_______|_________|______|__________ 
社員旅行  |                 |      | 
        全員       全員        希望者   希望者       
______|_______|_________|______|___________
有給休暇  |       |         |      |
  基準日方式   基準日方式     入社日方式  入社日方式       

(3)表が完成したら、さらに社員の種類ごとに次のマトリックスを作ります。縦軸に相違のあった待遇、横軸に3要素をおき、各相違が説明できるかを検討します


(有期契約社員との比較 例)  ◎充分説明可能  ×説明つかず

       1職務の内容   2人材活用の仕組み  3その他の事情

       (中核 責任) (異動 人事処遇)
______|_______|_______  |________|
基本給   |       |         |        |
         ◎         ◎         ◎
______|_______|_________|________|
昇給    |       |         |        |
         ◎         ×         ◎
______|_______|_________|________|
家族手当  |       |         |        |
         ◎         ◎         ×
______|_______|_________|________| 
通勤手当
         ◎         ×         ×
______|_______|_________|________|
社員旅行  |       |         |        |
         ◎         ×         ◎
______|_______|_________|________|
有給休暇  |       |         |        |      
         ◎         ×         ×

(4)説明がつくのであれば、当面処置なし。説明がつかないのであれば次へ。


(説明がつくとは「1職務の内容」、「2人材活用の仕組み」、「3その他の事情」の三つとも◎か、
または、「1職務の内容」、「2人材活用の仕組み」いずれかが◎で、「3その他の事情」が◎
上表の例だと、「通勤手当」と「有給休暇」は対策が必要。10月号の図表参照)


(5)正社員と同じにできるかをまず検討し、それが困難なら本シリーズ「迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える」その1からその5(特にその5の具体策)の中から取り得る対策を講じる。


(6)講じた対策を就業規則に規定する


5.最後に  要するに待遇差の説明ができるかどうかがポイントとなる 但し慌てて見直しはしない


今回の有期パート雇用労働法において、「待遇の相違の内容及び理由」の説明義務が新たに加わりました(有期パート雇用法第14条2項)。これは行政が指導・勧告する場合の対象ともなりますし、司法の場でもこの説明がきちんとできるかどうかが不合理性判断のポイントになるのです。

上記4で洗い出した各待遇の相違を非正規社員から問われたとき、曖昧な回答しかできないようでは勝負は見えていますし、労務管理で重要な納得性の観点からも不都合と言えます。従って相違はあっても良いが、「この相違は(3要素に基づいて)これこれこういう理由で違いがあるんだ」ときちんと説明できることが極めて重要であり、できればその説明を担保する制度設計が成されていることが望まれます。


ただ、現時点では判例上も行政上も判然としない待遇が沢山あるもの事実です。本給や退職金、慶弔関係などがその典型ですが、今後の裁判の蓄積を待たないと明らかになりません。会社から見ても明らかに不合理、ちょっとひどいかな?と判断できるもの以外は、しばらく様子見で構いません。企業の政策上の判断で待遇を引き上げる場合は別として、法改正に合わせて不合理化かどうか判然としない待遇を慌てて見直す必要なないというのが、私の結論でもあります。

 


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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