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想定外の速さで来た、コロナ第二波。企業の備えを検証する(2020.8月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2020年1月~12月

想定外の速さで来た、コロナ第二波。企業の備えを検証する(2020.8月号)

●想定外の速さで来た、コロナ第二波。企業の備えを検証する(2020.8月号) 

 

6月には一旦収束したかに見えた新型コロナウイルスでしたが、7月中旬頃から日に日に感染者数が増え、緊急事態宣言時を超えるまでになってしまいました。気温が上がり湿気も多い夏の間に一旦収束し、秋以降に第二波が来るであろうとの大方の予測を裏切り、まさに今、第二波の入口に入ったと考えられます。想定外に早く到来した第二波、夏の間にじっくり対策を検討する暇もなく、今すぐ手を打たなければならなくなりました。我々中小企業家は、何をすればいいのでしょうか?


そこで今回は現在考えられ得る職場のコロナ対策を以下の視点に分けて、考えたいと思います。検討している暇はありません。できることから即、開始してください。
1.働き方を変える
2.通勤の仕方を変える
3.他の企業で行われている職場の感染対策を真似る
4.意識啓発

当面、大阪モデル「大阪府新型コロナ警戒信号」が黄色または赤色の間など、一定の期間を区切って行います。

1.働き方変える

(1)テレワーク


情報通信機器が発達し、事務系の仕事では、会社を離れて仕事ができる環境が整ってきました。ZOOMやスカイプなどにより、遠隔地でも無料でビデオ通話ができ、電話とFAXだけの時代では不可能だったことが、出来る時代となったのです。テレワークとひと言で言っても、その形態は在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務とありますが、その中でも在宅勤務は有力な検討候補の一つです。テレワークの解説だけでかなりの文章量となるため、後日、テレワークの特集をこのメルマガ上で行いたいと思います。


(2)週休3日制

弊社では少しでも通勤リスクによる人との接触を低減させるため、この対応を取っています。その仕組みは簡単で、法で認められた変形労働時間制(1ヵ月または1年単位)を活用して、以下のような設計にします。

(ア)1日の所定労働時間を10時間以内とする。
(イ)1週に3日の休日を与える。
(ウ)就業規則を変更する。


ちなみに弊社では、通常勤務は土日祝完全週休2日の9時から18時の実働8時間ですが、

    1 営業員 10時30分から20時30分(実働9時間)  木曜日休み
    2 営業員 6時30分から16時30分(実働9時間)   火曜日休み
    2 事務員 7時30分から16時30分(実働8時間)   水曜日休み
       

の3パターンで運用しています。 1日10時間で週40時間は確保したかったのですが、これ以上時刻を繰り下げると、通常の通勤ラッシュとかち合うので、このようにしました。この間は残業一切禁止にします。1回出勤すれば、9時間も8時間もさして変わりはなく、それなら少しでも接触機会を減らし、休日を増加させます。給与体系は変更しません。


(3)短時間勤務

正社員は毎日8時間で皆と同じ、という先入観に囚われる必要はありません。特に緊急事態時は、正社員であっても1日6時間勤務など、変化を付けても構わないのです。10時から16時など、通勤ラッシュが緩和される時間帯で設定します。給与体系は原則として変えませんが、合意できれば短縮時間分をカットすることは可能です。

(4)フレックスタイム制

まだまだ小さな企業では採用が少ないですが、1ヶ月の限度時間(31日月なら177時間)内にて、始業、終業の時刻を自由に決められる制度です。これも自分の業務の都合に合わせて、勤務時間帯や出勤日を調整でき、通勤リスクの緩和にも資するものです。

(5)オンライン面談

ZOOM、スカイプ、チャットワーク、Teamsなど、無料で使用できるオンラインシステムが増えました。これらを利用して顧客との商談、社内会議等を行うものです。特に緊急事態宣言下においては、顧客から訪問自粛を要請されるケースもありますが、だからといって営業活動や顧客サービスをないがしろにすることはできません。
そんな時、これらのビデオ通話システムは重宝できます。ダウンロードも設定も使用方法も極めて簡単ですので、苦手意識をを持つことはありません。

(6)出張、訪問禁止

やはり人との接触機会を減らすためには、不要不急な外出は控えるべきで、職場で言うと出張と顧客訪問がその代表です。特に感染が拡大している国外や東京圏などへの外出は、「今、行かないといけないのか、今しかないのか」を問い、そうでないなら控えた方が良いでしょう。


(7)社内会議の廃止、削減

社内の狭い会議室で会議を行うのは、3密を作り出しているようなものです。オンラインで出来ないか、文書配布で出来ないか、そもそもその会議は今必要なのか検討し、出来るだけ密に集まって話し合う機会は避けるべきでしょう。

(8)休業(雇用調整助成金の活用)

9月30日までは緊急対応期間として、休業手当を助成する雇用調整助成金の支給要件、申請方法がかなり緩和されています。副作用もあるため長期間の利用はお勧めしませんが、そもそも仕事が激減しているのであれば、感染リスクも考えると社員を休ませた方が良いこともあり、そうであれば思い切って自宅待機させ、休業手当を支払って後刻、雇用調整助成金で助成を受けることも検討に値します。
現在弊社では、多くのクライアント様からの申請代行をいたしております。

(9)飲み会の禁止

夜の繁華街での接待や飲食が感染源となっていることは周知のとおりです。感染リスクにはできるだけ近づかない方が賢明です。プライベートでもできるだけ自粛して欲しいところですが、少なくとも会社が絡む飲み会は、しばらく我慢した方がよさそうです。

2.通勤の仕方を変える


(1)マイカー通勤許可

交通事故や遅刻のリスクを考えて、マイカーやバイクでの通勤は禁止している企業も多いことかと思います。実は弊社においてもそうだったのですが、現下においては一定の条件のもと、これを許可することとしました。やはり不特定多数との接触という、通勤リスク低減を優先して選択したものです。
この場合は、従来の通勤手当の扱い、ガソリン代をどうするか、駐車場の問題、保険の問題、事故時の取り扱いなど、誓約書できちんと取り決めをしておいた方が良いでしょう(雛型 弊社HPにあり)。


(2)時差出勤

先述、「週休3日制」の項でも弊社の事例で申しました。とにかく通勤ラッシュを少しでも回避することが目的です。1日の所定労働時間はそのまま、或いは時短勤務にするなど、色々なパターンが考えられますが、小規模企業でも取り入れやすい施策かと思われます。


(3)直行直帰

毎回、直行直帰とはなかなか行かないかもしれませんが、これも通勤による接触機会を少しでも減らすことに一定の効果はあるでしょう。労働時間の算定に関しては、原則、最初に用務に付いた先に入った時刻が始業時刻、最後に用務を終了した先を出た時刻が終業時刻となります。
これも制度化する場合は、労働時間の取り扱いや、自宅へ持ち帰れる書類等の取り扱いについてきちんと取り決めしておく方が良いでしょう。


3.他の企業で行われている職場の感染対策を真似る

(1)非接触型 電子デジタル体温計による入場者の検温

おでこの前で、ピッとやる、あれのことです。発熱していない方だけに入場してもらう事前チェックです。


(2)入館者リストの設置

事後対策になりますが、万が一社内で感染者が出た場合、それが外部から持ち込まれたものか、事後的に検証できるようにしておきます。


(3)飛沫防止シートの設営

ポールを立てて透明シートを貼り、飛沫感染を防止するものですが、スーパーなどあらゆるところで見かけるようになりました。一般企業でも受け付けカウンターに設置されているところがあります。なかなかホームセンターでは置いていませんが、ネット販売でも購入可能です。


(4)アルコール消毒液設置

今はこれを行っていないところの方が少ないかもしれません。ただ置かれている場所が地味だったりして素通りされる可能性もあることから、できれば派手な図柄で「ご利用ください」との注意喚起を行った方が良いと思われる設置状態のところも散見されます(雛型 弊社HPにあり)。
また構内が広い社屋では、入口だけでなく、至る所に設置しておいた方がなお安全です。


(5)入口にマスク設置

これも今時、マスクなしで訪問してくる人はほとんどいないかもしれません。しかし弊社へ来られるクライアントさんでも時たまマスクなしで来られる場合もあり、そんなときに備えて、入口に1ケース置いておき、「必ずマスク着用でご入室ください。お持ちでない方はこれをお使いください」などと掲示して、防御することをしています。


(6)着席禁止席の表示(ソーシャルディスタンス)

食堂など一堂に社員が集まる場所をお持ちの企業では、一定の距離を保ち、隣り合わせ、向かい合わせにならないように「着席 禁止マーク」を座席に貼っておくものです。4月からの健康増進法で喫煙専用室を設けたところもあるかと思いますが、利用人数制限を掛けます。


(7)感染予防品の備蓄

最近はマスクも消毒液も普通に入手できるようになりました。ただこのまま第二波が長引くと、また需給がひっ迫するかもしれません。せめて1ヶ月程度は社員に供給できるように、マスク、アルコール消毒液または次亜塩素酸ナトリウム消毒液、アルコールウエットティシュ、体温計くらいは備蓄しておきたいものです。


(8)消毒剤の配布

外出の多い営業員がいる企業では、携帯用のアルコール除菌剤を持たせます。できれば公共交通機関で通勤する者には全員配布したいものです。とにかくドアノブ、手すり等、不特定多数の人が触れた可能性のあるものに触った後、こまめに除菌してもらいます。


(9)冷房時でも換気

電気代が少々上がることは覚悟の上。感染者を出すよりよっぽどマシです。換気機能のない空調装置の場合は、少しだけ常時窓を開けておくなど、換気を忘れないようにしましょう。


(10)こまめな消毒

ドアノブ、手すり、マウス、スイッチ、便座など、誰もが触れる箇所をこまめに除菌消毒しましょう。できれば当番制にする、担当制にするなどして誰もやらない状態にならないようにしましょう。


4.意識啓発


(1)朝礼、ミーティング、終礼

できればコロナに対する会社の基本方針や対策を文書にまとめ、社員に告知します(雛型 弊社HPにあり)。この問題は一人一人の自己防衛、自粛意識に頼る部分が大きく、緩まないように繰り返し、繰り返し朝礼やミーティングの場を活かして啓発すべきです。また終礼は残業削減効果もあるためお勧めです。


(2)ポスター掲示

口頭や文書で繰り返すだけでなく、常に職場の見える箇所に、啓発ポスターを掲げておきます(雛型 弊社HPにあり)。見える化して意識付けします。


(3)グループLINEの活用

最近はグループLINE等のSNSを使って、社内の情報伝達を行うケースが増えていますが、これを利用して啓発します。ただし、所定労働時間外にいたずらに流すと、社員からクレームが入ることがありますので、勤務中か、それ以外では最低限に抑えるべきです。

これらの意識啓発で自己防衛に心掛けてもらうのですが、一つ気を付けなければならないのは、コロナに感染すること自体は悪ではありません。どんなに気を付けてもリスクはゼロにはならず、誰もが罹患する可能性はあるのです。あまりに「コロナにかかるなよっ!」みたいな圧が強いと、少々体調が悪くてもそれを隠し、無理して出勤してくる可能性がり、その方が危険です。
社内方針文書でも記載しておくのですが、体調が悪ければ勇気をもって会社を休む、という雰囲気づくりも大切です。

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

 

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