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2022年の労働社会保険関係 法改正情報(2022.1月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2022年1月~12月

2022年の労働社会保険関係 法改正情報(2022.1月号)

2022年の労働社会保険関係 法改正情報(2022.1月号)~今年も改正が目白押し~

   

明けましておめでとうございます。本年も毎月発信して参りますので、どうぞ宜しくお願い致します。

さて昨年もコロナに明け暮れた1年だったように思います。2019年まで盛んに報道された「働き方改革」という言葉もすっかり影を潜めましたが、法は猶予されることなく着々と進行しています。「働き方改革」は経済政策でもあり、生産性革命を目指すものですが、本年はこれに直接関連する法改正はありません。

今回はそれ以外の今年の法改正の情報を概観して行きたいと思います。

■傷病手当金の支給期間の改正(令和4年1月1日施行)

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が私傷病により労務不能となった時、休業4日目から最大1年6か月の間、労働者の所得保障としておおよそ休業前の給与の3分の2が支給されるものです。

この1年6か月とは支給を受け始めた時から暦日でカウントし、その間に一時出勤して賃金があって不支給となった場合も当該期間の延長はされず、支給開始日から1年6ヵ月目は動かない取扱いでした。
これが1月より、一部就労などで不支給期間がある場合は、1年6ヶ月の中にはカウントせず、受給した期間を通算して1年6か月となりました。つまり同一傷病で労務不能期間が継続する限り、最大1年6ヶ月分、受給することができるということです。


■育児介護休業法の改正(令和4年4月1日  令和4年10月1日改正)

2022年は4月と10月の2段階に分けて、改正されます。

◎4月の改正の内容

1.以下のいずれかより選択して措置する義務

(1)育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
(2)育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
(3)自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
(4)自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

(私見)
各企業で選択してもらうべきですが、小規模企業で一番簡易なのが(4)です。法改正の内容を新しい育児介護休業規程に盛り込み、従業員に周知しておけば足りると考えます。ただ次の2の措置との関連で、(2)の相談窓口を設置しておくことが望ましいと思います。


2.妊娠・出産を申し出た労働者に対する個別の周知義務

(1)育児休茉・産後パパ育休に関する制度
(2)育児休業・産後パパ育休の申し出先
(3)育児休業給付に関すること
(4)労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すぺき社会保険料の取り扱い

(私見)
これを全部人事部総務部のない企業内で説明することはほぼ困難と思われます。説明用の文書が公開されていますので当該文書を手交することで説明に代えるか、顧問社労士に説明を依頼することとなるかと思います。

3.1年未満の労働者も育児休業の取得が可能に

但し、労使協定を締結することで、除外することは可能です。

(私見)
入社して直ぐに「育児休業します!!」と言われると困る場合は、拒否できるように必ず締結しておく必要があります。


◎10月の改正内容

1.産後パパ休暇の創設

育休とは別に、産後8週間以内に男性が4週間まで休業することが可能になります。2分割で取得することも可能です。

(私見)
今回の改正の最大の目玉と言ってもいいでしょう。いわゆる男性版産後休暇です。小規模企業では労使協定を締結することで一定の制約を掛けることが可能ですので、締結しておいた方が良いでしょう。


2.育児休業を2回に分けて分割取得が可能になり、開始時期も1歳時点のみでなく柔軟化

(私見)
とにかくお手元の育児介護休業規程を改定する必要があり、10人以上の事業所は労基署へも届出する必要があります。2回に分けて変更するのは時間的にも労力的にも無駄なので、10月改正を先取りした形で4月までに改訂するのが実務的です。


■雇用保険 マルチジョブホルダー制度(令和4年1月1日)

これまでは1つの事業所で週20時間以上の勤務がないと、雇用保険に加入できませんでした。これが仕事を掛け持ちしている方は、各事業所の労働時間を通算して週20時間以上であれば、本人申請により、雇用保険に加入できることとなりました。手続きは本人が直接行います。但し当面は65歳以上に方に限定して行われます。

(私見)
政府が副業や兼業を推進していることもあり、労災でも複数事業場の労働時間を通算して労災認定することや、時間外労働の計算においても複数事業場の労働時間を計算するためのガイドラインが出ています。この政策もその流れに中にあるものですが、当面は65歳以上の方限定であり、かつ本人自らの手続きによるため、実務上はあまりないのではないかと推測しています。


■在職老齢年金制度の減額基準が緩和 見直し(令和4年4月1日)

厚生年金加入中で会社から給与がある場合、年金額が減額調整される仕組みのことを在職老齢年金といいますが、この減額基準が緩和されます。
従来は60歳代前半と、65歳以降では減額基準が異なり、簡単に言えば60歳前半の基準は厳しかったのですが、これが65歳以降と同じ要件に緩和されました。具体的には年金月額と報酬を足して、47万円以上にならなければ在職老齢年金は適用されません。

(私見)
これにより、普通のサラリーマンでは給与をもらいながら、年金も満額もらえるようになると考えて良いかと思います。毎月の厚生年金だけで10万円を超える方は僅少で、仮に10万円としても給与が37万円以上にならないと減額されないということで、60歳以降でこのような金額になる方はまずないからです。従って年金のことを心配せずにに報酬設定をすることができます。


■パワハラ防止法(労働施策総合推進法)が中小企業にも適用(令和4年4月1日)

大企業では2020年6月から施行されていますが、いよいよ中小企業も本年4月よりパワハラ防止措置が義務付けられます。パワハラとは、「優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。

会社の措置義務は以下の通りです。

◎事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
◎就業規則への記載   
◎パワハラ防止研修の実施
◎相談窓口の設置
◎迅速かつ適切な対応
◎その他の措置(プライバシーの保護、不利益取り扱いの禁止など)

(私見)
現在の労使紛争で一番多い形態がこのパワハラです。企業としてもリスク管理として、就業規則への記載と研修による啓発が非常に重要となります。普段から研修を行って防止措置を取ることが、万が一パワハラ紛争になったときに企業の免罪符の一つになり得ます。また先述の育児介護休業法においても、後述する公益通報者保護法においても、そしてこのパワハラにおいても相談窓口がいかに機能するかが大切なことになっています。小規模企業ではこういった問題の総合窓口を開設しておくこともお勧めします。


■101人以上の企業 パートアルバイトへの社会保険適用拡大(令和4年10月1日)

中小企業におけるパートアルバイトの社会保険(健康保険・厚生年金)の加入基準が以下の通りとなります。

9月まで  正社員の1週の労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が4分の3以上の者(おおよそ週30時間以上)

10月から  週所定労働時間が20時間以上かつ月収8.8万円以上で2か月を超える雇用見込みがあり、学生でない者


(私見)
101人とは企業単位でかつ被保険者数で判断します。この基準は2024年10月には51人以上に引き下げられることも決まっており、会社によっては相当大きな人件費アップになります。厚労省の特設サイトでは増える保険料のシミュレーションが可能です。
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

以下は直接労働法の分野ではありませんが、従業員に関連するものです。

■公益通報者保護法の改正(令和4年6月1日)

◎事業者に対し。内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)を義務付け。 ※中小企業(従業員数300人以下)は努力義務
◎行政機関や報道機関への通報要件の緩和
◎退職後1年以内の従業員や役員を通報できる労働者に追加など

■(道路交通法)安全運転管理者の業務の改正(令和4年10月1日)

業務において自動車を5台以上(乗車定員11名以上のものは1台以上)使用している事業所は、安全運転管理者を選任し、公安委員会へ届け出することが道路交通法で定められています。この車は業務で使用する車であれば社有車に限らず、マイカーやレンタカーを含みます。道路交通法の改正により次の業務が安全運転管理者の新たな業務として追加されました。

1.アルコール検知器の使用等
(1)運転前後の運転者に対し、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて行うこと
(2)アルコール検知器を常時有効に保持すること

なお、国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは、呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有するものとなっています。


(文責 特定社会保険労務士  西村 聡)

 

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