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多くの社長が不満を持っている 管理職とは一体何か?(2022.7月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2022年1月~12月

多くの社長が不満を持っている 管理職とは一体何か?(2022.7月号)

多くの社長が不満を持っている

●管理職とは一体何か?(2022.7月号)

 

管理職が育たない、管理職らしくない、期待外れ、裏切られた思い・・・・

おおよそ中小企業の社長の管理職に対する共通する感覚です。中小企業では中々良い管理職が育ちません。オーナー系家族経営から脱皮できるかどうかの分水嶺とも言える重要なテーマです。


思うに・・・・

中小企業で管理職が育たない、管理職らしくないのは構造的な問題があると考えています。それは何かと言うと、「管理職のイメージが右脳にない」ということです。どういうことでしょうか?

中小企業の採用経路はほぼ、中途採用がメインです。新卒採用を定期的に行うところは非常に少ないでしょう。中途採用ということは、過去数社の他企業を経験しているのですが、その規模は中小企業がほとんどです。つまり中小企業を渡り歩いているのですが、ここで「モデルとなる良い管理職」に出会わなかった可能性が高いと思われます。

誤解を恐れずに言うならば、新卒で最初に就職した企業が”そこそこのレベルの会社”であれば、「モデルとなる良い管理職」に出会える可能性はかなり高まりますが、ここでチャンスを逸すると、一生、「モデルとなる良い管理職」に出会わず、イメージを持てないままに終わることとなるのです。

ここでいう「モデルとなる良い管理職」とは、理屈で説明できるものではなく、感覚的なものです。従って論理的思考をつかさどる左脳で考えるものではなく、イメージを理解できる右脳にその残像があるかどうか、ということなのです。

つまり簡単に言ってしまえば、「管理職とはあの会社にいた時の●●さんみたいな人」という画像が頭にないのです。私はいくら口で言っても、中々思うような管理職像になってくれないのは、こういう構造的な問題があるからだと考えています。

しかしだからと言って、一流企業に出向させて、「管理職のイロハを学んで来い」、というわけにも行きません。

限られた人的資源の中で、やりくりして行くしかないのです(ちなみに管理(マネジメント)とはやりくりすることという意味です)。


そこで今回からしばらくの間は、この悩める管理職問題について、シリーズにて考えて行きたいと思います。

まず第1回は役職手当について考えてみます。

◎役職手当に込める思いを文字と言葉で明確にしよう


世の多くの企業に役職手当なるものがあります。私のように人様の給与台帳ばかり見ている者の実感として、非常によく登場する手当です。課長とかリーダーとか工場長とか、役職名は会社ごとに色々ありますが、とにかくそういう役職者に付いている手当なのです。しかし、この意味が実に曖昧で怪しい。せっかく事業主が出しているお金が死に金になっているように思えてならないことが多いのです。


 ズバリ結論から申しますと、役職手当とは「一般の社員にはない特別な責任と役割を与えられた人に対して、その責任と役割に応じて支給されるもの」と定義することができると思います。「長くいるから課長さん」ではないはずです。また役職手当は生活給の足しでもありません。役職手当で「今よりいい生活をしてくれ」ではなく、「これで会社のために何かをやってくれ」という、あくまでも特別な責任と役割に対するオプションです。

 このことを解説する前に、まず賃金というものの構成がどうなっているかを今一度考えてみましょう。多くの企業は「基本給+諸手当」という構成になっていますが、この意味は累積賃金と時価賃金ということです。
累積賃金とは主に基本給のことで、その従業員の生活を支える基本となるもので、その会社における時間軸や経験に比例させます。つまり「今までこの会社にどれだけ貢献してきたか」という時間的な概念と「年相応に生活できる賃金を保障する」という性格のものです。

 これに対して役職手当は時価賃金です。つまり今までどうだったかは余り関係なく、その人の今現在の価値、つまり「今の役割はどうなのか」に対して支給されるものです。これは現在価値が変われば、増えたり減ったり、なくなったりするもので、いわば基本給のような積立の既得権はなく、毎年見直しされても良いくらいです。

 役職手当というのは、その年その年に与えられる特別のミッション(使命)に対して、その責任と役割を果たしたかを検証すべきもので、もしそうでなければ時価ではありません。
 特別の責任と役割というものは、企業によって違うわけですが、例えば「自分の仕事以外に人材を育てる仕事」とか、「自分の成績よりも会社の数字を管理する仕事」であったり、あるいはより具体的に「生産コストを○%削減せよ」とか、「○○君に××ができるように指導せよ」などと指令することになり、その役割に対して一定の裁量を与え、責任を取らせるものです。役職手当は、その責任と役割に対するお金です。ただ漫然と生活給の足しに支給されるものではない筈です。

 そうだとすれば、多くの中小企業の経営者はもっと役職手当に込めるメッセージを明確に伝えるべきです。ただ何となく払っているとすれば、もったいないことです。自分の仕事以外に会社の為に何をやって欲しいのかを、きちんと伝えましょう。役職手当はそれに対する手当であることを役職者に認識してもらいましょう。そして1年ごとにそのメッセージが履行されたかどうかを確認し合い、時価に見合った賃金になっているかどうかを毎年検証しましょう。役職は既得権ではないのですから。既得権とは一度もらえば定年まで続くお金のことです。


 誰をどの役職に就け、それをどのように評価するかは経営者の専権事項である人事権の一つです。せっかく払っている役職手当をもっと生きたお金にしたいものです。ただそのためには、部下が残業しても逆転しないだけの厚みのある金額設定をする必要があります。課長になって残業が付かなくて、残業手当の付く係長より給与が減るのは本末転倒ですから気を付けたいところです。


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

 

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