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いよいよ半年後に迫る、残業代50%増しへ (2022.11月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2022年1月~12月

いよいよ半年後に迫る、残業代50%増しへ (2022.11月号)

●いよいよ半年後に迫る、残業代50%増しへ (2022.11月号)

 2019年から施行された働き方改革関連法、コロナ前は毎日のように新聞紙上をにぎわせた「働き方改革」という言葉も、この3年間はコロナでかき消されたような感があります。

しかし来年2023年4月からも非常に大きな改正が控えています。それは残業代が現在の倍、つまり5割増になるという法改正です。


1.概要は以下の通りです。

◎2023年3月まで

時間外労働の割増率は25%で一律

◎2023年4月から 

60時間以下の時間外労働の割増率 25%
60時間超の時間外労働の割増率  50% 

実は大企業は2010年(平成22年)4月からすでにこうなっており中小企業は長い間猶予されていたのですが、いよいよ来年4月から大企業と同じく60時間を超える時間外労働には5割増で支払わなければならないのです。これはコストが上がることだけでなく様々なところに影響が及ぶことが予想されます。


まず第一に、コストアップ。残業の多い会社は今から試算しておく必要があり、後述する時間管理が出来なければ、コストアップは避けられません。現在の円安基調が継続すればほとんどの内需型中小企業は、燃料や原材料費がアップすることに加えて、人件費もアップしてしまうのです。
価格転嫁できれば良いのかもしれませんが、原材料高による転嫁と違って、「60時間超の残業で生産しましたからその分、値上げしてください!」なんて言えるはずがありません。確実に利益を圧迫します。


第二に労務管理が複雑になるということです。結論から申しあげると現状の中小企業の労働時間管理では60時間以下と、60時間超の時間外労働を切り分けて管理することはかなり困難な作業になるかと思われます。よっぽど上等な就業管理システムを導入すれば可能かもしれませんが、労務担当者の勤怠管理及び給与計算は負担感がかなり増すこととなるでしょう。


第三にこれを契機に、未払い残業代への関心が高まることが予想されます。おそらく来年4月前後にはマスコミでも報道され、一部の労働者系の弁護士や労働組合がバックにつくなどして、きちんと計算されているかを会社に求めてクリ可能性があります。特に残業代は2020年4月から請求権の消滅時効が2年から3年に延長されており、おそらく2025年には民法の規定に合わせて5年となるか可能性もあり、放置しておくと加速度的に差額が累積するリスクが生じます。
残業代に関しては、計算方法や時間のとり方などどこかおかしいところがあることの方が一般的で、完璧に計算されていることの方が少ないというのが印象です。大きなリスクとなります。


第四にこの問題に焦点を当てた労働基準監督署の臨検調査が厳しくなる可能性です。まだ来年度の行政運営方針は発表されていませんが、当然、労基署は重大な関心をもって調査に望むことになるでしょう。労基署の調査で違反を指摘されると申告してしてきた社員との問題としてだけでなく、全員に影響が及ぶこととなります。


2.今後求めらられる労働時間管理


上記のような60時間超による時間外労働のリスクを甘受する決意をした企業であるなら格別、やはりリスクは避けたいと考えるのであれば、今後の労働時間管理は以下のようになります。


◎1年単位の変形労働時間制の会社

1ヶ月の時間外労働42時間×6か月=252時間 a
1ヶ月の時間外労働60時間×6か月=360時間 b
a+b=612時間

◎完全週休2日制または1ヶ月単位の変形労働時間制の会社

1ヶ月の時間外労働45時間×6か月=270時間 a
1ヶ月の時間外労働60時間×6か月=360時間 b
a+b=630時間


この範囲で収まっていない会社は、半年後に向けて今からこの範囲内に収まるような労働時間管理を行わなければならないでしょう。
(労働時間を削減する生産性の向上についてはH28.10月号及び11月号をご参照ください)


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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