2023年1月~12月
経営者の就業規則をに対する勘違い~ 社長さん、就業規則は会社を守るためにあるものです (2023.2月号)
~経営者の就業規則をに対する勘違い~ ●社長さん、就業規則は会社を守るためにあるものです!!(2023.2月号)
あるとき、何気なしに就業規則の話題になったとき、ある社長はこう言いました。
「えっ、就業規則って社員のためにあるもんだと思ってた!」「従業員の味方じゃないの?」と。
大きな勘違いです。少なくとも私のように経営者側で仕事をしている立場から言えば、こう反論します。
「就業規則は経営の武器、会社を守る盾になるんですよ」と。
確かに就業規則の作成も労働者を守るための法律である労働基準法によって、常時10人以上の従業員がいる事業場に作成と届出を義務付けています(労基法第89条)。
そういうこともあって形式的には作成している会社もありますが、その内容を拝見しておりますと、いざというときに使い物にならないものが多いのです。その訳を推察すると、法律で決まっているから何となく作っているとか、大手企業や親企業の規則をそのままコピーしてきたとか、書店やネットにある汎用式のものを使っているからだと思われます。
また助成金を受給したいからと、無理やり就業規則の体裁を整えるような、おおよそ邪(よこしま)な考えで作成されているものも散見されます。
はっきり言います。ちゃんとした就業規則を作りましょう!
それがなく経営を行うということは、まるでウイルス対策ソフトを入れないでパソコンをネットに繋いでいるような状態です。無防備で危険極まりない状態なのです。
先ほど、「就業規則は経営の武器、会社を守る盾」と申しました。武器には盾と矛(ほこ)があります。ここでいう盾とは、ウイルス対策ソフトのような防御壁のことです。
このことを理解して頂くためには就業規則の法的性質も理解いただく必要があります。
(労働契約法 第7条)
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする(以下略)。
これは非常に大事なことをシンプルに言っています。
簡単に意訳すると、就業規則をちゃんと周知しておけば、就業規則に書かれて内容が労働契約の内容になるということです。労働契約になると言う意味は、個別に合意していなくとも、就業規則に書かれているルールが適用されるということなのです。
「えっ、でも就業規則を労基署に出すとき、従業員代表にサインもらわなければならいじゃない?」
こんな疑問を持たれる社長もいます。これも勘違い。サインをもらうのはあくまでも労基署に就業規則を届出するときの手続き上のルールであって、就業規則の効力とは無縁のものです(良いか悪いかは別として、仮に「この就業規則には反対です」と意見を書かれても、効力にはまったく影響ない)。
で、この就業規則。作成に関して法的には合意や話し合いは不要で、会社が一方的にルールを決定できるのです。これを有効に利用しない手はありません。
つまり会社にとって有利な使える規定を盛り込んでおき、問題社員との間で困ったことが起こったとき、会社の意思として統一的画一的に対処できるルールを作っておくのが、経営者目線の就業規則です。だから会社を守る盾となる武器となるのです。
ヒト、モノ、カネ、情報と言われるように、人は一番最初に来る大切な経営資源です。しかし人を使っていると、必ず問題やトラブルも生じます。
たとえば・・・・
〇病気で長期間会社を休んでいる従業員がおり、その間他の社員にも負担が掛かっており、後任の採用をして良いかも判断できず、会社負担分の社会保険料もずっと発生している。一体いつまで籍をおいておけばいいのか?
〇仕事のことで注意したら、急に会社に出てこなくなり、無断欠勤を続けている。電話しても出ない。解雇はしたくないので自主的に退職してもらいたいのだが?
〇何度注意をしてもたびたび不良品は出す、反抗的な態度を繰り返す、他の社員も迷惑している。何らかのしかるべき厳しい対応を取りたいと思っている。どうすればいいのだろうか?
ページを開けば、困ったことに対処する方法が書いてある。こういったことに対して答えを出させるのが盾となる就業規則なのです。
就業規則、あなどるなかれ。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)