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一般の方が素朴に思われる疑問にことにお答えします Q&A集 (2023.6月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2023年1月~12月

一般の方が素朴に思われる疑問にことにお答えします Q&A集 (2023.6月号)

一般の方が素朴に思われる疑問にことにお答えします Q&A集 (2023.6月号)

私どもは社労士事務所として、お客様から労務管理や社会保険に関する様々なご相談を受けますが、我々からすると当たり前と思っていたことでも、一般の方からすると分からないことや、ご存じないことが意外に多いものです。今回はよくあるご質問をQ&Aでお纏めしておりますのでご参照頂ければと思います。


1.Q 試用期間中の事故やパートが怪我した場合でも労災は受けられますか?

  A 受けられます。
    労災保険は会社単位で加入する保険で、雇用保険や健康保険のように社員個々について加入手続きを取りません。要するに会社で直接雇用している労働者であれば、在籍中の怪我や疾病であれば試用期間であろうが、パートで    あろうが、日雇いであろうが、外国人であろうが、個々人の属性は全く関係がありません。

 

 

2.Q 雇入れてみると素行不良な社員がいます。試用期間だから本採用せず、契約期間満了として終わらせてもいいですか?

  A 契約期間満了になるのではなく、解雇となります。
    試用期間と有期労働契約を混同しておられる典型的なケースです。試用期間とは通常、長期雇用を前提としながら本採用移行前のテスト期間のことです。試用期間は契約の存続期間ではないので、本採用拒否は解雇に当たりま    すので、解雇通知が必要です。これに対して有期雇用契約は、契約の存続期間であり、原則は契約期間満了と共に自動退職となるものです。ここでは簡単な解説に留めますが、要するに両者は同じものではないのです。


 
3.Q 従業員が通勤途中で怪我をしましたが会社に届出している通勤手段ではないことが分かりました。労災は支給されますか?

  A 問題ありません。
    通勤災害の認定に当たり、会社に届け出ている経路や通勤手段でないといけないなどという要件はありません。電車通勤で届出していたが、実際は車を利用して交通事故で怪我をした場合などが典型的な例ですが、労災の認定    には影響しません。要は合理的な通勤経路から逸脱や中断がないかが重要になります。

 

 

4.Q パートが社会保険に加入いしたいと言っています。正社員になったら加入すると説明しても問題ありませんか?

  A 間違った認識による説明になりますので問題があります。
    公的社会保険制度は、一定の要件に該当すれば会社や本人の意思に関わりなく強制加入となっており、この要件には正社員とパートで分けるというものはありません。あくまでも就労時間や日数で機械的に決まるものです。具    体的には健康保険と厚生年金の場合は、時間と日数が正社員の4分の3以上(101名以上の企業は20時間以上)恒常的にある場合、雇用保険は31日以上の雇用見込みでかつ週20時間以上恒常的にある場合は加入義務が    あります。

 

 

5.Q 社員が25日付の退職を希望していますが、会社負担の社会保険料がもったいないので給与締めの20日を退職日すれば節約できますか?

  A 月末退職以外は、いつ退職しても社会保険料は変わりません。
    社会保険料(健康保険と厚生年金)には日割りという概念がありませんので、経論すれば1日だけでも1ヶ月分がかかります。違いが出るのは月末退職の場合で、この場合は当月分も会社は負担します。、例えば5月1日から    30日間の退職の場合は、前月の4月分まで会社は負担しますが、31日付の場合のみ5月分まで会社も負担することとなります。

 

 

6.Q 課長を任せている者が、残業代を請求してきました。管理職で役職手当も払っているのだから残業代は不要と思っていいですか?

  A 管理職=残業代の不要な管理監督者ではありません。
    一般的に課長以上は残業代が付かないと誤解されていますが、法的にはそのような機械的な要件はどこにもなく、過去の裁判例によっておおよそ次の3要件によって判断されています。一つ目が経営者と一体的な立場で重要な    職責を担っていること、二つ目に労働時間について裁量度が大きいこと、三つ目に一般社員より明らかに高額な給料が支払われていることです。多くの事例ではこの要件を満たさないのですが、労使間の納得性の問題も大きい    分野です。この社員も3要件のいずれかで納得していないはずです。


7.Q 何度もミスをするので厳しく指導をすると「パワハラだ!」と言っています。今は厳しい指導は控えた方が良いのでしょうか?

  A 厳しい指導=パワハラではありません。むしろ毅然と指導すべきです。
    最近は自分に会社で起こる嫌なことは短絡的に「パワハラだっ」と言ってくる傾向にありますが、会社はそれに怯んではいけません。むしろミスが多いとか、組織の秩序を乱す社員に対しては、ある程度厳しく注意指導してお    かないと、その状況を黙認したことになり、解雇や懲戒処分などの人事措置が取りにくくなりますし、周りの他の社員への悪影響が甚大です。要するに手を出すとか、皆の前で大声で辱めるようなことを言うとか、常識的に酷    いと思われる仕打ちをしていなければ良いのです。パワハラ、恐れるべからずです。
  
    

8.Q 協調性のない社員がおり困っています。30日前に予告するれば解雇は可能と聞いたのですが?

  A 解雇は可能ですが、有効かどうかは別問題です。
    よく30日前に予告するか、30日分の手当を支払えば解雇可能と考えておられる方があります。しかしこれは刑事罰のある労働基準法に定める解雇手続きを履践しているだけに過ぎず、刑事上処罰されないということで、民    事上有効かは別問題です。民事上の判断基準は1,解雇に合理的理由があること、2,社会的に相当であることなのですが、ごく簡単に言えば具体的な解雇事由があり、教育や指導を尽くしても如何ともしがたいという場合に    有効となるのですが、極めて予測可能性の低い分野です。解雇せずに退職勧奨する方がリスクは少なくなります。

 

 

9.Q 60歳定年後、再雇用で嘱託になっている62歳の社員がいます。本人が希望すれば65歳迄雇用継続しなければならないのでしょうか?

  A 必ず65歳まで雇用継続する義務はありません。
    高齢者雇用安定法では65歳までの就労を義務付けているのではなく、あくまでも国が企業に対して65歳まで働き続けられる制度を作りなさい、という義務なのです。個々人を65歳まで継続させなけれなならないものでは    ありません。従って定年を迎える社員を絶対に継続させなければならいとか、定年後の再雇用者は65歳まで更新しなければならないという義務ではなく、更新時に退職や解雇に該当する事由がある場合、または会社から提示    した労働条件で合意できない場合は雇止めもあり得ます。

 

 

10.Q 請負で構内作業を任せている者の中で作業手順が悪い者がいます。プロパーの社員と一緒に特別教育指導を行うつもりですが何か問題がありますか?

   A 請負社員に直接注意や指導をすることは避けるべきです。請負元の会社を通じて指示してもらう必要があります。
     直接雇用、請負(委任を含む)、派遣の違いを正しく理解する必要があります。簡単に言いますと、許可を得た派遣会社からの派遣社員には直接指揮命令ができますが、請負(委任)で来ている社員にはプロパー社員と同      様の指揮命令はできません。これをやると偽装請負になります。請負社員に対しては請負元の会社の責任者を通じて指導を行ってもらうこととなります。

 

 

11.Q 最近は飲食店やコンビニで外国人が働いているのをよく見ます。外国人も自由に雇用して構わないのでしょうか?

   A 外国人の雇用は自由ではなく、厳しい規制があり、それを守らないと刑事罰に問われることがあります。
     外国人を雇用する場合は、国内で就労できる在留資格で、かつ在留期間が切れていないかを在留カードで確認する必要があります。街でよく見かける外国人アルバイトは留学生です。本来、「留学」は就労不可ですが資格外     活動許可を受けている場合は週28時間まで就労させることが可能です。一定の業種においては「技能実習」と「特定技能」という資格で就労してもらうことは可能です。これ以外においては中小企業の現場で就労できる資     格は今のところありません。よく「技術・人文知識・国際業務」の資格で単純労働に付かせているケースがありますがこれも違法になります。

 

 

12.Q ある取締役(役員)を解雇したいと思います。労基署へ行かれたくないので、何か気を付けることはありますか?

   A そもそも取締役は労働者でないため、労基署は関係ありません。
     労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法など多くの労働者保護法がありますが、これらはすべて労働者に適用されるものであり、取締役には関係がありません。解雇ではなく会社法に基づく手続きにおいて解任するか、任     期満了で終了させることとなります。最も使用人兼務役員という立場の方もあり、また名目上は取締役でも実態は労働者性がある場合には例外的に労働法の適用が及ぶことがあります。

ここでお答えしたことは、極めて単純化しておりますので、ご了承ください。また時機を見て、皆さまの素朴な疑問にお答えして行きたいと思います。

 


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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