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解雇を考える前に  問題社員はまず退職勧奨してみよう その1 (2023.9月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2023年1月~12月

解雇を考える前に  問題社員はまず退職勧奨してみよう その1 (2023.9月号)

解雇を考える前に  問題社員はまず退職勧奨してみよう その1 (2023.9月号)

 

今回いわゆる問題社員と、いかにして円満に分かれるかということを主眼として解説します。問題社員とは、

〇能力不足(仕事が遅い、ミスが多い)
〇執務態度が悪い(協調性がない、反抗的)
〇勤怠不良(欠勤が多い)

こんな社員を想定しています。横領とか刑事罰にかかるような問題行動はここでは想定していません。このケーズは退職勧奨ではなく、懲戒解雇となるからです。


こういった問題社員は解雇ではなく、退職勧奨という手法を使います。解雇は反撃を受けるリスクが高いため、よっぽどでない限り伝家の宝刀として最後に温存しておきます。


1.自由に行える! 解雇とはまったく別の退職勧奨を理解する

退職勧奨はよく解雇と勘違いされるのですが、解雇とは全く別のもので、自由に行うことができます。 離職には、従業員からの一方的な解約である辞職と、使用者からの一方的な解約である解雇があり、その間に合意解約があります。この合意解約にも二つあり、一つは従業員から退職したいとの申し入れであり、一般的に自己都合と言われるものです。これに対し、会社から辞めてもらえませんかと打診するのが退職勧奨であり、その結果、従業員が受け入れればこれも合意解約となります。退職を促す行為である退職勧奨自体は自由に行うことができるのです。

ただ自由とは言っても、以下のような場合は違法と判断される可能性があるので、注意を要します。

(1)明らかに拒否しているのに執拗に迫る
(2)大人数で取り囲む
(3)いたずらに長時間迫ったり、監禁する
(4)暴言、罵倒、脅迫じみたことを行う

2.解雇は危険! 問題社員にはこの流れで退職勧奨をする

問題社員だからといって、いきなり解雇するのは非常に危険です。日本の労働法制は採用はかなり自由度が高いのdすが、解雇は厳しい制限があり司法は簡単に認めてくれません。従って解雇紛争を避けるため、ケースにもよりますが、概ね以下のようなスケジュールで考えます。


ア まず退職勧奨してみる→受け入れれば即退職手続きに入る
         ↓
イ アで受け入れなければ、改善プログラムを3か月間組む
         ↓
ウ 3か月経過後、改善が見られれば経過観察、見られなければ再度退職勧奨

ア まず退職勧奨してみるについて

まず退職勧奨してみます。退職することに同意した場合は、気が変わらないうちに、直ちに社長が退職を承認(合意)し、早急に退職日を確定させます。一旦人事権者と合意した退職の意思表示は、その後撤回することができないからです。 そして退職願を書いてもらうか、退職合意書を作成します。但し、退職に迷いを見せる言動がある場合には、強引に書かせることは避け、1日空けてから書いてもらうこともあります。これはケースバイケースです。


イ 改善プログラムを3か月間組むとは

1回目の退職勧奨に成功しなかった場合は、次のステップに進みます。漫然とやり過ごすのではなく、必ず期間を切った改善プログラムを組み、このように伝えます。

「よしわかった。でもまだウチで頑張るということなら、今のままでは駄目だ。向う3か月間の改善指導プログラムを組むので、真剣に取り組んで結果を出して欲しい。また3か月後に話し合おう」

この改善プログラムですが、決して難しいことを要求するものではなく、やる気さえあれば誰でもできる課題を10項目程度で書き出し、毎日自己チェックさせます。応じない場合は業務命令を出してでも行います。これにより本当に改善してくれればそれに越したことはありませんが、経験上そのケースは稀です。
結論から言いますと、この目的は3か月間指導したけれども、こんな簡単なことすらできない、守れない、やらないという事実を残すためなのです。とにかく3か月間、会社も本人も、この課題に対して、コミットし続けます。ほったらかしはいけません。不真面目なときは、文書で注意書、警告書を出します。仮に受けとらないケースがあれば、その事実を日記のように時系列に記録しておいてください。その他気づいたことも、何でも記録しておいてください。


以下次号

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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