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延長されていた事業所の自動車運転アルコールチェックがいよいよ12月より義務化 (2023.10月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2023年1月~12月

延長されていた事業所の自動車運転アルコールチェックがいよいよ12月より義務化 (2023.10月号)

延長されていた事業所の自動車運転アルコールチェックがいよいよ12月より義務化(2023.10月号)

本来、令和4年10月より白ナンバー車のアルコールチェックが義務化されるはずででしたが、検査機器の不足により延期されていました。これがいよいよ本年12月1日より完全義務化となります。対象となる事業所は、安全運転管理者を選任して警察署に届出が必要な事業所で、具体的には以下のいずれかに該当する事業所です。


○乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有している
○その他の自動車を5台以上保有している(自動二輪車は0.5台でカウント、原付は対象外)

※この自動車は白ナンバーを含みます。
※会社単位で見るのではなく、各事業所ごとに判断します。
※業務で使用する自動車のみであり、例え社有車でも通勤で使用する車は含みません。但しマイカーでも業務で使用する場合は対象となります。


つまり自動車を5台以上保有している事業所は、以下の法改正に対応しなければなりません。

◆令和5年12月1日施行

○安全運転管理者は、運転者の酒気帯びの有無の確認を、公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて目視等で確認を行うこと。
○アルコール検知器を常時有効に保持すること。

※「国家公安委員会が定めるアルコール検知器」については、呼気中のアルコールを検知し、その有無又は濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能などいずれでも確認できるものであれば足り特段の性能上の要件はありません。

※ アルコール検知器が品薄となる可能性があります。早めに手当てしておいた方が良いかもしれません。

※「運転前後」とは、必ずしも運転の直前直後の都度確認するのではなく、運転を含む業務の開始前や出勤及び終了後や退勤時に行うことで足ります。

※「目視等で確認」とは、運転者と対面し、顔色、呼気、応答の声の調子等で確認することをいいます。

※安全運転管理者の不在時など管理者による確認が困難な場合は、副安全運転管理者又は安全運転管理者の業務を補助する方でも酒気帯びの確認をしても差し支えありません。

※直行直帰など対面での確認が困難な場合は、これに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携行型アルコール検知器を携行させるなどした上で、携帯電話などにより、安全運転管理者と直接対話できる方法によって、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法などがあります。


Q1  マイカー通勤をしているが業務として車を運転しない者にも酒気帯びの有無を確認しなければなりませんか?

A1 アルコール検査の対象となるのは、事業所の業務のために運転する者(私有車両を業務で使用する場合を含む)です。業務として車を運転しない者は確認の対象になっていません。「私有車両を業務で使用する場合」とは、車両等の使用者(事業主)が、勤務時間において同車両を実質的に管理し、いわゆる社用車として運用するような場合をいいます。

Q2  1日に事業所と取引先を数回往復する場合、その都度酒気帯びの有無を確認しなければなりませんか?

A2 「運転を含む一連の業務の開始前や出勤時、及び終了後や退勤時に行うことで足りる。」とされています。

Q3 社有車以外で業務を行っている場合はアルコール検査、記録の対象になりますか?

A3  社有車、レンタカー、持ち込みのマイカーに関わらず、業務を行う車両は全てアルコール検査と記録の対象となります。
し、いわゆる社用車として運用するような場合をいいます。

Q4 確認結果の記録は文書で保存しなければいけませんか?

A4 記録は1年間保存しなければなりません。保存の方法については文書で保存するか、パソコンファイル等の電磁記録で保存することとなります。

Q5  アルコール検知器を使用した場合における確認結果を数値ではなく、アルコールの有無だけを記録してもよいですか?

A5 アルコール検知の有無だけでもよいこととなっています。なお、アルコールの検知があった場合は、どのような指示を行ったのか、どのような措置を取ったのかを記録しなければなりません。アルコール検知の程度に応じて、指示や措置の内容が変わる場合もあると思われますので、検知の有無に加え数値も記録したほうが良いでしょう(数値のみの記録でもよい)。

Q6  国家公安委員会が定めるアルコール検知器とはどのようなものですか?

A6 呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等のいずれかにより示す機能があればよいとされています。市販のアルコール検知器でも構いませんが、「アルコール検知器を常時有効に保持すること。」とされていますので、信頼性の高いものを選んでください。

Q7 アルコール検査は誰が行うのですか?

A7 基本的には安全運転管理者又は副安全運転管理者が行うこととなります。チェック対象者が多い場合や安全運転管理者等が不在の場合などに安全運転管理者の業務を補助する者が行っても差し支えありません。ただ場合によっては運転停止を命ずる必要がありますのである程度の権限を保持した者が安全運転管理者になることが望ましいです。

Q8  出発前のチェックを行った事業所ではなく、別の事業所で運転業務を終えた場合のチェックはどうしたらよいですか?

A8  自動車の使用者(事業主等)が同一であるが使用の本拠が異なる事業所(本店と支店の関係や、同系列の支店などを指す。以下、「他の事業所」という。)において、運転者が運転を開始し、又は終了する場合には、他の事業所の安全運転管理者の立会いの下、運転者に他の事業所の安全運転管理者が有効に保持するアルコール検知器を使用させ、その後、運転者に測定結果を電話などの直接通話できる方法で、所属する事業所の安全運転管理者に報告させたときは、酒気帯びの確認を行ったものとして取り扱うことができます。

Q9  深夜や早朝に対応する確認者を確保することが困難な場合はどうしたらよいですか?

A9  確認者は原則として安全運転管理者ですが、安全運転管理者の業務を理解しており、アルコールが検出された場合は、直ちに安全運転管理者に報告し、その指示を仰ぐことができる人物であれば補助者として確認者になれ、その他資格は問いません。深夜や早朝に安全運転管理者が対応できないときは、(1)あらかじめ確認の当番を決めておき、深夜、早朝の確認に対応する。(2)同じ時間帯に活動している他のドライバーが確認する。などの方法が考えられます。それでも確認の体制を確保できないときは、アルコールチェック代行サービスを行っている業者がありますので検討してください。いずれの場合も、アルコールが検出されたときは、補助者又は代行業者が直ちに安全運転管理者に報告し、必要な指示や措置は安全運転管理者が直接行うという体制を取ってください。


Q10 アルコール検査を実施していなかったり、確認結果の記録を作成しなかった場合は処罰されますか?

A10 検査を怠ったり、記録していなかったことを直接罰する規定はありませんが、公安委員会から保存記録の提出を求められた際にそれらの事実が判明した場合は、安全運転管理が適切に行われていないことになりますので、道路交通法第74条の3に基づき、是正のために必要な措置を命じられる場合や安全運転管理者の解任を命じられることがあります。これらの命令にも従わなかった場合には、50万円以下の罰金刑に処せられます。

Q11 運転前の検査でアルコールが検出された場合、どうしたらよいですか?

A11 道路交通法65条は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定めています。これは、酒気帯びの程度に関わらず運転をしてはならないという意味です。酒気帯び運転の処罰基準が呼気1リットル中、0.15 ミリグラム以上と定められているのは、あくまでも処罰の基準ですから、アルコールが検出されたときは 0.15 ミリグラム未満の数値であっても運転をさせてはなりません。

Q12 従業員がアルコールチェックを拒否した場合どうしたらよいですか?

A12 アルコールチェックは法で定められた義務です。この義務を履行できないことになりますので、この従業員に業務を伴う運転をさせてはなりません。運転を伴わない業務を命じてください。

Q13  確認結果の記録を役所などに提出することはありますか?

A13 確認結果の記録は1年間保存すると規定されていますが、定期的な提出の義務を定めた規定はありません。ただし、道路交通法第75条の2の2で、「公安委員会は、自動車の安全な運転を確保するために必要な交通安全教育その他自動車の安全な運転に必要な業務の推進を図るため必要があると認めるときは、自動車の使用者又は安全運転管理者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」と規定されています。例えば、業務運転中の従業員が重大事故等を起こした場合などに、警察から確認結果の記録の提出を求められることがあります。確認結果を適切に記録・保存していなかった場合は、道路交通法第74条の3に基づき、安全運転管理者の解任を命じられることがあります。


そもそも従来からある安全運転管理者制度が余り周知されていませんので、以下に概要を記載します。

1 安全運転管理者の資格要件

 (1) 安全運転管理者
  ○年齢20歳以上(副安全運転管理者を置く事業所は30歳以上)の者で下記のいずれかに該当していること
   ・運転管理実務経験 2年以上
   ・公安委員会の教習を受けた者 1年以上
   ・公安委員会の認定を受けた者
  〇 過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等解任命令を受けたことがない者
  〇 過去2年以内に特定の違反行為をしたことのない者

 (2) 副安全運転管理者
  〇 年齢20歳以上の者で下記のいずれかに該当していること
   ・運転管理実務経験 1年以上
   ・運転経験 3年以上
   ・公安委員会の認定を受けた者
  〇 過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等解任命令を受けたことがない者
  〇 過去2年以内に特定の違反行為をしたことのない者

※実務的には一定の労働者に車の使用を禁止できるような権限のある管理監督職の方が想定されます。

2 安全運転管理者の業務

 (1) 運転者の状況把握  (2)安全運転確保のための運行計画の作成 (3)長距離、夜間運転時の交替要員の配置 (4)異常気象時の安全確保の措置 (5)点呼等による安全運転の指示
 (6) 運転日誌の記録 (7)運転者に対する指導 (8)酒気帯びの有無の確認及び記録の保存 (9) アルコール検知器の使用等

   
 
3 酒気帯び確認の内容の記録項目(1年間保孫)

 〇 確認者名
 〇 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号
 〇 確認の日時
  ・アルコール検知器の使用の有無
  ・対面ではない場合の具体的方法
 〇 酒気帯びの有無
 〇 指示事項
 〇 その他必要な事項 など

※記録内容が見たされる限り、運転日誌との共用とか、任意様式で構いません。 

4 届 出

安全運転管理者を選任したときは、15日以内に必要な添付資料をつけて所轄の警察署に届出しなければなりません。
事務手続きの詳細 大阪府警HP
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/tetsuduki/ankankosyu/7375.html

 

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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