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空前の求人難、、、多様な働き方の提示で乗り切れるか?その2(2024.7月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2024年1月~12月

空前の求人難、、、多様な働き方の提示で乗り切れるか?その2(2024.7月号)

●空前の求人難、、、多様な働き方の提示で乗り切れるか? その2(2024.7月号)


採用状況が逼迫しています。バブル期を上回る売り手市場となり、人手不足による倒産や縮小も現実のものになってきました。2,000年代に入ってから構造的に労働力人口が減っていること、コロナが明けて経済活動が回復していることが大きな要因かと思われますが、仮説として従来の働き方が崩壊してきていることも要因のように思われます。どういうことでしょうか?

皆さまは「タイミー」ってご存知でしょうか?最近はメルカリが「メルカリ ハロ」というのを開始したとの報道もありますが、いわゆる「スキマバイト」のマッチングアプリのことです。

いま飲食業を中心に猛烈に勢いを伸ばしているこれらの仕事マッチングアプリ。これらを利用する若者は昭和的な働き方とは無縁の人達です。自分が働きたいときだけ働き、即金でもらう。そんなことの繰り返しです。いわば日雇いバイトなのです。私のように古い人間から見ると信じがたい働き方ですが、これが受けているのです。

先ほど昭和的な働き方と言いましたが、これはつまり朝9時に出社して18時まではおり、月~金曜まで毎日働くモデルのことです。これが当たり前と思ってきましたが、「タイミー」で仕事を探す彼らは対極にいます。

そうすると現在の人手不足は労働力人口の絶対的な減少要因だけではなく、昭和的な従来の働き方へ応募する若者が相対的に減少していることも要因ではないかと考えられるのです。

ほとんどの企業が日雇いバイトで対応するのは無理があり、やはり昭和的な働き方を中心に考えざるを得ないとしても、単一の正社員モデルだけでなく、日雇いマッチングまでとは行かなくとも多様な働き方を提供して行かないと、乗り遅れるのではないかと考えられるのです。多様な雇用形態が登場してきています。従来の典型的な勤務シフトである毎日フルタイム勤務が静かに崩壊し出しているのです。


これからは好むと好まざるに拘わらず、求職者の多様な就労ニーズ、言いかえると「わがまま」に応えて行けるかどうかが人材確保の成否を分けることとなる可能性が高いのです。今まで企業は顧客のニーズ(わがまま)に対しては対応をしてきましたが、今後は求職者を顧客と見立てて、そのニーズに応えて行ける企業が、採用活動で生き残る企業になって行くのかもしれません。

企業の論理としては、毎日決まった時間に決まった人が働いてくれる方が、何かと都合が良いのは明らかです。しかし現代の多様化した求人ニーズに応えていかなければ、競り負けることとなってしまいかねません。では多様な働き方とはどんなものがあるのでしょうか?


取り上げる多様なな働き方のバリエーションは、
1.週休3日制
2.短時間正社員
3.兼業・副業
4.テレワーク
5.限定正社員(配置転換のない勤務地限定、職種変更のない職務限定、時間外労働のない時間限定)
6.時差出勤(全員一律出社に拘らず、段階的に出勤時間をずらす)
7.勤務間インターバル(終業後から一定時間を空けること。例えば夜遅くまで残業した場合に、始業時刻をずらす)
8.フレックスタイム(自分で自由に勤務時間を決められる)
9.裁量労働制(自由出勤制)
です。


このうち1から4は前回解説しておりますので、今回は5以降について解説します。


5.限定正社員

昭和的な働き方では一度就社すると、辞令1枚であらゆる仕事、あらゆる場所で勤務することが命じられました。従業員はジョブローテーションや転勤を業務命令で受け入れてきたわけですが、この異動を制限し、本人の望まない仕事や場所では就労させない者を、限定正社員といいます。

これには職種変更のない職務限定、配置転換のない勤務地限定、残業や休日出勤がない時間限定があります。ちなみに本年4月より雇用契約を締結する場面では、就業場所と職種の明示に関し、採用時の配属先だけでなく、将来に渉る変更の範囲を記載する義務が生じています。これにつきましては3月号で述べていますが、基本的に変更の範囲の書き方は「会社の定める業務」「会社の定める場所」と記載いただくのが望ましいとの見解を述べました。
しかし限定正社員の場合はこれと異なり、このような記載となります。

【雇用契約書 記載例】
職種:(採用直後)一般事務  (変更の範囲)なし  または一般事務に限定する
就業場所:(採用直後)●●営業所勤務 (変更の範囲)なし または●●営業所勤務に限定する

これにより事務しかしたくない方には事務でキャリアを積んでもらうことで安心してもらいます。また地元採用など就労場所を異動したくないと考えている方に安心してもらうのです。ただこうした契約をした場合は仮にその後異動してもらいたい事由が生じたとしても、会社の業務命令で異動させることはできず、必ず本人の個別同意が必要になります。そういった意味で会社が従来保持していた異動の裁量権を手放すこととなりますので、以下のような条項を雇用契約時に合意しておき、就業規則の退職事由の条項にも加えておくことを推奨します。

【雇用契約書 記載例】
退職:●●業務または●●営業所が無くなった場合は、その最終日から1週間経過後をもって自然退職とする。

これにより少なくとも当該業務や場所がなくなったときに、本人に他の職務や場所を一応打診し、合意が得られなければそれ以上の配慮をする必要はなく、自動退職とするものです。また募集のときの例示は以下の通りです。

【求人広告 記載例】
勤務場所の異動はありません。ご自宅から近い場所を離れることなく安心して勤務できます!!


6.時差出勤

これはコロナ禍において中小企業でも試みられたところが多いのではないかと思います。実際やってみると、そんなに大きな混乱はなかったのではないでしょうか?
全員一律出社に拘らず、グループごとに出勤時間をずらすとか、個人的事情に配慮して出勤時刻をずらすことで様々なニーズに応じるものです。例えば朝は旦那が子供を保育所に預けに行き、帰りは妻が迎えに行くという家庭事情の場合、旦那は本来9時から18時のところ、朝の始業時刻を1時間ずらして10時から19時まで勤務するというような感じです。


【求人広告 記載例】
時間:9時から18時
   ※育児等、ご家庭の事情に配慮した時差出勤制度あります(例 10時から19時など。ご相談ください)


7.勤務間インターバル


勤務間インターバルとは、終業後から始業時刻までに間を一定時間空けるもので、例えば夜遅くまで残業した場合に、始業時刻をずらす制度のことです。実は2019年から開始されている働き方改革関連法において、努力義務となっているものですが、これをアピールして行きます。
どうしても夜遅くなる残業が避けられない会社の場合、労働から解放される休息時間を確実に確保できることを謳って有効に活用できる可能性があります。

【求人広告 記載例】
勤務間インターバル制度あり、仮に夜遅い残業があっても翌日の始業時刻をずらして最低11時間の休息を保証します!!
(例) 23時まで残業した場合の翌日は10時出社で可!

8.フレックスタイム


これは始業終業の時刻を本人の自由に任せるもので、1日あたりで労働時間を管理せず、1ヶ月とか3か月の期間ごとに労働時間を管理すればよいものです。従って1日8時間を超過していても月の労働時間が法定内であれば、割増賃金を支払う必要はありません。
またコアタイムと言って、必ず出社して欲しい時間帯を決めておくこともできます(例えば11時から14時をコアタイムとするなど)。あくまでも出退社の時刻を自由に決められるということで、勤務日まで自由になるわけではありません。

採用できる職務は限られてくるかもしれませんが、大人の働き方(自己完結できる方)には採用を検討できます。これを導入する場合は、必ず就業規則にフレックスタイムの規定を入れ、労使協定を締結しておく必要があります。


【求人広告 記載例】
時間:1か月フレックスタイム制(フレキシブルタイム:7時から11時、14時から22時。コアタイム:11時から14時)
※※育児、介護、習い事など、ご自身の事情で自由に勤務できます!


9.裁量労働制(自由出勤制)

最もフレキシブルな制度です。ここでの裁量労働制は様々な誓約事項のある労働基準法上の裁量労働制を言っているのではなく、労働時間は通常通り計測する必要がありますが、本人の自由な意思で出勤時間を決めるjことができ、場合によっては労働日も裁量に任せるものです。
企画開発関係の職務や、定年再雇用後の勤務形態として検討できるのではないかと思います。


【求人広告 記載例】
究極の自由出勤制!!貴方のご都合のよい日時で働いてください!!


【雇用契約書 記載例】
労働時間: 9時00分~18時00分(この間で自由出勤制) 
     ※上記所定労働時間の範囲内において乙は原則的に自由に勤務時間を決定することができる。勤務記録は乙の責任において勤怠簿に記録すること。但し甲が特別に時間を指定したときはそれに従う。

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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