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委託契約がある場合は要注意!!フリーランス新法が11月1日より施行されます(2024.11月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2024年1月~12月

委託契約がある場合は要注意!!フリーランス新法が11月1日より施行されます(2024.11月号)

11月よりフリーランスとの取引に関する新しい法律が施行されました。通称「フリーランス新法」のことです。この法律の趣旨をごく簡単に言ってしまうと、弱い立場のフリーランスを法で守って行くということです。フリーランスと委託契約を締結している企業には少なからぬ影響がありますので、今回はこの新法の概要を解説します。


1.用語の定義

フリーランス:業務委託の相手方である事業者で従業員※1を使用しない者※2
       ※1 従業員とは1週20時間以上で常勤者のこと
       ※2 個人事業主または法人で一人社長のこと

発注事業者:従業員を使用している事業者のことで個人・法人は問わない

委 託:フリーランスに製造や役務の提供を任せること※1
   ※1 形式上は委託でも実質的に使用従属下にある労働契約と見なされる場合(いわゆる偽装委託)は本法ではなく、労働基準法等の労働法が適用される


2.書面等による取引条件の明示義務


業務委託をした場合、書面等により、直ちに次の取引条件を明示する必要があります。明示は書面の他、SNSなど電磁的方法でも構いません。

  「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「発注事業者・フリーランスの名称」「業務委託をした日」「給付を受領/役務提供を受ける日」「給付を受領/
役務提供を受ける場所」「(検査を行う場合)検査完了日」「(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項」


3.報酬支払期日の設定・期日内の支払義務


発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが必要となります。支払期日を 定めなかったり、60日を超える定めをした場合にも60日ルールが適用されます。
  
支払期日とは日を特定することであり、●●日までとか、●●以内という表現は認められません。


4.発注事業者の7つの禁止行為


フリーランスに対し、1か月以上の業務委託をした場合は、次の7つの行為をしてはならないことになっています。

    (1)受領拒否
       フリーランスに責任がないのに受け取りを拒むこと

    (2)報酬の減額
       フリーランスに責任がないのに後から報酬を減額すること
  
    (3)返 品
       フリーランスに責任がないのに受領後に引き取らせること

    (4)買いたたき
       通常の対価に比して著しく低い報酬を定めること

    (5)購入・利用強制
       発注事業者が指定する物など強制して購入、利用させること

    (6)不当な経済上の利益の提供要請
       タダで役務を提供させるなど不当な要求をすること

    (7)不当な給付内容の変更・やり直し
       フリーランスに責任がないのに費用を払わず、やり直しや変更をさせること


5.募集情報の的確表示義務


広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはなりません。特に労働契約と混同されるような表現はしてはいけません。


6.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務


6か月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないことになりました。

(例)
・「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること
・「介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したい」との申出に対し、一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること など

やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮を行うことができない理由について説明することが必要となります。
申し出を行ったことを理由として以下の不利益措置を行うことはできません。

(1)契約の解除を行うこと
(2)報酬を支払わないことまたは減額を行うこと
(3)給付の内容を変更させることまたは給付を受領した後に給付をやり直させること
(4)取引の数量の削減
(5)取引の停止
(6)就業環境を害すること


7.ハラスメント対策に係る体制整備義務


フリーランスに対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じることが義務化されます。
  (1)ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
  (2)相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  (3)ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など

ここでいうハラスメントとは、セクハラ、パワハラ、マタマラ(妊娠・出産・育児に関するハラスメント)が想定されています。


8.中途解除等の事前予告・理由開示義務


6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告しなければならないことになりました。予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければなりません。

この30日前予告は発注事業者に課せられるもので、フリーランスからの解除には適用されません。 発注事業者とフリーランスの間で、「一定の事由がある場合に事前予告なく解除できる」と定めていた場合も、例外事由※1に該当しない限り、直ちに事前予告が不要とはなりませんので留意が必要です。

  ※1 例外事由
   (1)災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
   (2)フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
   (3)業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
   (4)フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
   (5)基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合


9.違反行為への対応

フリーランスは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、発注事業者に本法違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができます。命令違反には50万円以下の罰金があります。

発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません。

またフリーランス・トラブル110番が設置され、弁護士にワンストップで相談できる体制も整備されています。

こうして概観してみると、「6.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務」や「7.ハラスメント対策に係る体制整備義務」、「8.中途解除等の事前予告・理由開示義務」などは、労働者との関係に近いもので、労働者と同様に保護して行こうとする姿勢が見て取れます。

また4.発注事業者の7つの禁止行為も気を付けたい行為類型でです。この紙面では概要に留めていますが、、委託契約を結んでいる企業、または締結しようとする企業は更に詳細な留意事項がありますので、専門家に相談するなどしてフリーランスとトラブルにならないように気を付けて頂きたいです。


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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