メニュー

困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その3(2025.9月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

インフォメーション(過去のメルマガ)

2025年1月~12月

困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その3(2025.9月号)

●困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その3(2025.9月号)


前回からの続き

まず口頭で注意→指導書交付→警告書交付→(軽い懲戒処分) と段取りを踏んでも改まらない場合、解雇の前にまずは退職勧奨を検討します。特に反抗的な社員は、解雇すると反撃を受けるリスクが高いため、よっぽどでない限り伝家の宝刀として解雇は最後に温存しておきます。

できるだけ解雇は避け、合意解約に持ち込みします。仮に解雇で紛争になった場合、弁護士やユニオンの介入を許し、1年間は付き合う覚悟が必要になります。この間にかかる無駄な労力、時間、費用、精神的負担は相当なものです。仮に1年後に勝訴判決を得たとしても、会社には何も益が残りません。しかも仮払いが認められれれば、解雇した社員に給料を支払い続ける必要が生じ、勝訴してもまず戻ってきません。
よっぽど会社の主張を公に認めさせたいなどの強い動機がない限り、解雇は最終手段として取っておきましょう。まずは退職勧奨です。

 

1.自由に行える! 解雇とはまったく別の退職勧奨を理解する

退職勧奨はよく解雇と勘違いされるのですが、解雇とは全く別のもので、自由に行うことができます。 離職には、従業員からの一方的な解約である辞職と、使用者からの一方的な解約である解雇があり、その間に合意解約があります。この合意解約にも二つあり、一つは従業員から退職したいとの申し入れであり、一般的に自己都合と言われるものです。
これに対し、会社から辞めてもらえませんかと打診するのが退職勧奨であり、その結果、従業員が受け入れればこれも合意解約となります。退職を促す行為である退職勧奨自体は自由に行うことができるのです。

ただ自由とは言っても、以下のような場合は違法と判断される可能性があるので、注意を要します。

(1)明らかに拒否しているのに執拗に迫る
(2)大人数で取り囲む
(3)いたずらに長時間迫ったり、監禁する
(4)暴言、罵倒、脅迫じみたことを行う

 

2.解雇は危険! 問題社員にはこの流れで退職勧奨をする

問題社員だからといって、いきなり解雇するのは非常に危険です。日本の労働法制は採用はかなり自由度が高いのですが、解雇は厳しい制限があり司法は簡単に認めてくれません。労働者側弁護士やユニオンの介入を招くリスクがあり、解雇紛争を避けるためケースにもよりますが、概ね以下のようなスケジュールで退職勧奨を考えます。


ア まず退職勧奨してみる→受け入れれば即退職手続きに入る
         ↓
イ アで受け入れなければ、改善プログラムを3か月間組む
         ↓
ウ 3か月経過後、改善が見られれば経過観察、見られなければ再度退職勧奨、応じなければ解雇も

 

ア まず退職勧奨してみるについて

まず退職勧奨してみます。退職することに同意した場合は、気が変わらないうちに、直ちに社長が退職を承認(合意)し、早急に退職日を確定させます。一旦人事権者と合意した退職の意思表示は、その後撤回することができないからです。 そして退職願を書いてもらうか、退職合意書を作成します。但し、退職に迷いを見せる言動がある場合には、強引に書かせることは避け、1日空けてから書いてもらうこともあります。これはケースバイケースです。

退職合意書とはおおよそ以下のような内容の文書を双方で交わすものです。


(退職合意書の例)※実際の記載内容はケースバイケースです。次号で内容について解説します。

------------------------------------------------------------

退 職 合 意 書

株式会社甲商店(以下「甲」という)と乙山太郎(以下「乙」という)とは、甲乙間の雇用契約に関して、以下の通り合意する。

1 甲と乙は、当事者間の雇用契約を令和●年●月●日(以下「退職日」という)限り、合意解約する。
2 甲は乙に対して、特別退職金として金●●円を支払うものとし、これを令和●年●月●日限り、乙の通常の給与振込口座に振込送金する方法で支払う。なお振込手数料は甲の負担とする。
3 甲は本件合意解約に関し、雇用保険の離職証明書の離職事由は、甲からの退職勧奨の受け入れ扱いで処理する。
4 甲は乙に対して、令和●年●月●日から退職日までの就労義務を免除し、令和●年●月分給料として令和●年●月●日限り、金●●円から公租公課を控除した残額を第2項の預金口座に振込送金する方法で支払う。
5 乙は、本合意書の成立及び内容並びに本件の経緯を第三者に漏洩しないものとし、今後甲乙共に誹謗中傷しないものとする。
6 甲は、本合意書締結以降、乙の不利益となる情報を開示せず、第三者から乙の退職原因を問われた場合には、円満に合意退職したことのみを告げるものとする。
7 乙は甲の営業秘密及び個人情報にかかる資料並びに甲からの貸与物は、正本、複写等の別を問わず、すべて退職日までに甲に返却し、退職日以降一切所持しないことを誓約すると共に、甲の在職中に知り得た甲の営業秘密及び個人情報について、退職後も第三者に漏洩しないものとする。
8 甲と乙は本合意書に定める他、乙の退職後の守秘義務等乙が退職後も負うべきものとされる義務を除き、甲乙間において何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
9 乙は本合意書締結前の事由に基づき、甲の役員、従業員、株主に対し、一切の訴訟上、訴訟外の請求を行わないことをここに同意し、確認する。
10 退職日以降、甲の施設内に乙の私有物がある場合、乙は甲にその処分を委任する。

甲乙間の合意の証として本合意書を2通作成し、署名または記名押印して各々1通を保管するものとする。
令和●年●月●日
(甲) 株式会社甲商店
    代表取締役  甲川 一郎

(乙) 乙山太郎

------------------------------------------------------------

イ 改善プログラムを3か月間組むとは

1回目の退職勧奨に成功しなかった場合は、次のステップに進みます。漫然とやり過ごすのではなく、必ず期間を切った改善プログラムを組み、このように伝えます。

「よしわかった。でもまだウチで頑張るということなら、今のままでは駄目だ。向う3か月間の改善指導プログラムを組むので、真剣に取り組んで結果を出して欲しい。また3か月後に話し合おう」

この改善プログラムですが、決して難しいことを要求するものではなく、やる気さえあれば誰でもできる課題を10項目程度で書き出し、毎日自己チェックさせます。応じない場合は業務命令を出してでも行います。これにより本当に改善してくれればそれに越したことはありませんが、経験上そのケースは稀です。

結論から言いますと、この目的は3か月間指導したけれども、こんな簡単なことすらできない、守れない、やらないという事実を残すためなのです。とにかく3か月間、会社も本人も、この課題に対して、コミットし続けます。ほったらかしはいけません。不真面目なときは、文書で注意書、警告書を出します。仮に受けとらないケースがあれば、その事実を日記のように時系列に記録しておいてください。その他気づいたことも、何でも記録しておいてください。


(以下次号)


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

お問い合わせ