平成21年1月~12月
口下手でもいい、経営者は「一言(ひとこと)」を大切にしよう! (H21.3月号)
●口下手でもいい、経営者は「一言(ひとこと)」を大切にしよう! (H21.3月号)
ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったり深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
本当に人を使うのが難しい時代になりました。でも人を使わずして、経営を行ってゆくことはできません。どうしたらもう少しスムーズな労使関係が築けるようになり、100%紛争を回避することは不可能だとしても、その確率を減らすことができないものでしょうか。
私がこの問題を考えるとき、大きな視点では①如何に不良社員の入社を水際で防ぐか、②今いる社員に不満が鬱積しない労務管理を如何に行うか、にかかっていると思うのです。それには以下3つのポイントがあると考えています。そのポイントとは、
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)
3.おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること(特に雇い入れのルールを曖昧にしない)ということです。以下それぞれ解説します。
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)について
今の労働者は、今までのように会社にも非があるけれども、自分も足りないところがあるから文句を差し控えよう、なんて謙譲の心を示す人の割合が、相対的に少なくなっています。ある労働基準監督官と話をしていても、「今の労働者には問題がある人が多いですね。他の事は棚に上げて、労働基準法上の権利だけは主張される。諌めようとするとある労働組合からは、労働基準監督署は経営者寄りだと非難を受けている始末です」とおっしゃています。
経営者に悪意がある場合は論外として、知らずに法違反を犯し、それを知っている労働者から指摘を受けるケースがあります。今の時代は知らなかったでは許されない不寛容な時代になっています。せめて専門書とは行かなくとも実務書レベルの労働基準法に関する書物は一度お読みいただければと思います。その上で、我々社会保険労務士とか弁護士とか専門家を傍において、使いこなしてもらえれば、相当程度の紛争は未然に回避できます。自ら勉強し身近な相談相手を作ることは是非行って欲しいものです。
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)について
私はかねてより、労務は感情、労務は心理学と訴えてきております。これは現在働いている従業員との関係において、むしろ前述の法律よりも非常に重要な観点です。にもかかわらず、総論的に申し上げて経営者の方が苦手にしている分野ではないかと推察するのです。例えば人を褒めることの効用は誰でも聞いたことがあるはずですし、感謝する心が大事だとか、相手の話を否定せずよく聞くだとかは良好なコミュニケーションにはいいことだ!!とものの本には書いてあります。でもコーチングだとか実際やるのはちょっと難しい。だったらもっと簡単な方法はないものでしょうか。そこで思いついたのはたった一言の癖付けです。
例えば・・・・
褒めるというのに抵抗があるなら一言 「さすがやね」「すごいわ」
ありがとうと感謝するのが気恥ずかしいなら一言 「すまん」「助かるわ」「わるいなあ」
期待を込めるのが上手く言えないなら一言 「ほな、頼むわな」
相手の人格を認めるのが苦手なら一言 (話しかけるとき)「ちょとええかな」(話を聞き終わったとき)「よし分かった」
関西弁は非常に便利です。いかがでしょう。これくらいならすっと言えないでしょうか。すでに自然に出来る方や、これ以上のコミュニケーションを取れている方には蛇足だったかもしれませんが、もしご参考なるなら是非お試しください。その際一番良いのは心から言うことですが、せめて必死に演じる努力はしたいものです。
3つ目のポイント「おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること」については次回以降に譲りたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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