平成22年1月~12月
社員の指導のために行動日記を付けよう ~従業員を指導する立場の方へ~ H22.11月号
●社員の指導のために行動日記を付けよう ~従業員を指導する立場の方へ~
従業員を指導する立場にある使用者の方へ質問です。従業員との面談や人事考課は何のために行うのでしょうか?
私はこう考えています。人事考課とは「企業の経営の意思の伝達と、そのフィードバックの作業」であると。少し難しい言い方をしましたが、要するに「うちの会社ではこういう行動を取って欲しい」とか「こういう考え方を持って欲しい」とか「こういう結果を出して欲しい」など、企業が従業員に求めるものがあって、それをきちんと伝えることであり、また一定期間後にそれらが伝わっているかどうかを確認し、もし認識にズレや誤解があれば、それを埋め合わせてゆく作業だと思うのです。
そして会社として承認できることと、承認できないことを明らかにし、承認によってモチベーションを喚起すると共に、その望ましい行動を強化し、また逆に承認しないことによって望ましくない行動を弱化し、違う行動へと導いて行くことだと思うのです。
しかし理屈はそうなのですが、実務上これを行うのは結構難しい。何故なら、管理者が部下の望ましい行動や望ましくない行動をきちんと指摘できないからです。何故指摘できないかというと、それは記録がなく、記憶のみに頼っているからです。確かに記憶により、一定の印象形成はできますが、望ましい行動や考え方を具体的に承認できません。
そこで提案したいのが、社員の指導のために行動日記を付けようということなのです。このことを具体的に申し上げる前に、何故、行動を具体化する必要があるのかについて少し触れたいと思います。
行動分析学という心理学の学問があります。ここでの人間に対する考え方は人を性格や能力という漠然としたもので捉えるのではなく、表に出ている行動に着目し、それを制御することによって、教育指導して行こうとするものです。例えば次をご覧ください。
承認(笑顔)なし ⇒ {会議で進んで発言する} ⇒ 承認(笑顔)あり
仮に会議で積極的に発言しない人がいたとします。会社は積極的に発言して欲しいと思っています。その人が発言をしました。すると発言することによって管理者から承認(笑顔)という反応が返ってきました。これは{会議で進んで発言する}という望ましい行動を承認によって強化したことになるのです。
ポイントは{ }の部分です。この中に行動が入るわけで、それが望ましい行動ならその後の返しは承認(笑顔、褒める、うなずく)になり、望ましくない行動なら指導・注意となるのです。非常に単純な理屈です。
しかし実務上難しいのが、{ }内に入る行動を具体的に特定できないことです。これが特定できないと強化も弱化もできないのです。何故特定できないかと言えば、些細なことの連続であり、印象としては残るが具体的なことは忘れてしまうからです。だから記録を残すのです。
以下にサンプルを掲示しました。簡単で負担にならない書式で記録を残しましょう。半年分まとめて思い出すのは不可能です。毎日帰社前に、5分間、部下の行動記録をつけましょう。そして具体的事実を提示して、いい行動は翌日にはフィードバックしましょう。
サンプル書式
↓
http://www.nishimura-roumu.com/documents-2/
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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