平成29年1月~12月
小規模企業は、社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう H29.8月号
小規模企業は、社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう(H29.8月号)
~小さな会社の人材募集の一つの考え方~
●社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう
私は中小企業の人材確保は、社長がストレスを感じない人物をまず優先すべきだと考えています。
ただ、一口に中小企業といってもその規模には、かなりの開きがあります。中小企業基本法によるとその規模の定義は以下の通りです。
○製造業 資本金3億円以下、または従業員数が300人以下
○卸売業 資本金1億円以下、または従業員数が100人以下
○小売業 資本金5千万円以下、または従業員数が50人以下
○サービス業 資本金5千万円以下、または従業員数が100人以下
この規模以下であれば、法律上は中小企業と定義されます。
しかし、私共が20年にわたり、中小企業の労務管理のお手伝いをさせいただいている実感からすると、この規模はかなり大きなものです。
50人以上の従業員を抱える企業に出会うことは、実は非常に少ないのです。
別の統計があります。
平成27年版経済センサスによると、日本にある民営事業所の従業員数ごとの割合は以下の通りとなっています。
○「1~4人」が322万5千事業所(事業所全体の58.2%)
○「5~9人」が109万事業所(同19.7%)、
○「10~19人」が65万事業所(同11.7%)
従業者数10人未満の事業所が全体の約8割を占めているのです。20人未満だと約9割となります。この実感は、私共の皮膚感覚に非常に近いものがあります。
つまり、一口に中小企業といっても、その実態のほとんどが、小規模事業者なのです。そしてその経営の多くは、オーナー家系による同族経営で行われています。
こういった背景の下、経営者の大部分を占める10人未満の小規模事業者は、「自分のエコひいきで人材を採用するのが基本」だと考えています。つまり社長が好む性格傾向の人材、ストレスを感じない人材を優先すべきだと思うのです。
私は日常、経営者の方から従業員のことで、様々なご相談を承りますが、その多くの類型が「社長から見て困った社員」に関するご相談なのです。困った社員といっても、法的には、解雇や懲戒処分などできない案件がほとんどです。法的に問題なのではなく、社長と合わない、のです。
その合わない社員は、毎日、目の前にいます。どこか遠くの支店で働く名前も顔も知らない社員ではありません。何百何千人といる中の一人でもないのです。
そうであるならば、経歴、保有資格、スキルに注目する前に、まず「自分と合うかどうか」を判断の機軸に据えた方が良いと思うのです。いくら仕事ができても、社長と合わなければ、その後ストレスが貯まるだけで、会社へ行くのも億劫になってしまいます。特に、創業間もない小規模企業であれば、社長と合う人材を集めて、自社の社風を確立することが先決でしょう。
仕事は、多少、習熟に時間の長短はあっても、大抵教えればできるものです。後からでもいいのです。しかし、合わない性格傾向を合わす事は、ほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。教える以前の問題となります。
ただ、そうすると同じ傾向の人材ばかりが集まり、多様性がなくなり、組織として活力を発揮できないのではないか?と考えられる方もおありでしょう。「ウチは10人未満だが、今回の募集は従来の我が社にはない気風の人材を、意図的に採りに行く」という、強い動機のある場合はそれで結構だと思います。そのような異色の人材を採りに行くという、積極的動機がない限り、社長の好き嫌いを優先した方が、結果的には安定した労務管理ができるというのが、現在の私の結論です。
そうすると、社長と合う人材とは、どのようにして見分ければ良いのでしょうか?
1回の面接でその人の性格傾向を全て知覚することは不可能ですが、雇用契約を締結するまでにいくつかのハードルを設けることで、合わないリスクを減らすことは可能だと考えています。キットを使用して、性格検査を行うのも一つのハードルですが、工夫すれば幾らでもハードルを設置できます。
参考までに・・・・
一例です。
好きなタイプ:控えめで、常識があり、慎重で真面目で努力家。
嫌いなタイプ:イケイケ、破天荒で、猪突猛進、要領の良い人。
一つのハードル=時間
約束時間少し前に来る ○
遅れてくる ×
早く来過ぎ ?→×
解説
時間通りに来るのは当たり前。遅れてくるのはもってのほか。では早く来過ぎは?
上記の性格タイプが好きなら、×にすべきです。約束時間までは何も予定がないのであり、時間を潰して入ってくることができるはず、自分が早く着いたから早く入ってくるのは、自分の都合であり、自己中心的。相手は準備をしているかも知れないとの配慮や、早く行き過ぎて失礼と思われるかもしれないとの、相手を慮る想像力が欠落している可能性があるから。
世の中のほとんどの経営者が小規模事業者です。最終責任(リスク)は自らが引き受けるのですから、社長の好き嫌いをもっともっと、表に出して行きませんか?
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)