平成20年1月~12月
大した労務資源を持てない中小企業だからこそ、気をつけたい心の労務管理 (H20.4月号)
●大した労務資源を持てない中小企業だからこそ、気をつけたい心の労務管理 (H20.4月号)
中小企業の労務環境は大企業と比べて、非常に劣るものがあります。ただ給料水準だけでなく、人事制度面、福利厚生面、教育・能力開発面、施設整備面など多岐に渉ります。これらお金や時間、労力が必要なものは、とても太刀打ちできません。これらは確かに重要なファクターではあるのですが、一方で労務は人間関係、もっと言えば感情や心理学の世界で動いています。ここがポイントなのです。
そこでサラリーマン経験もある私が、その当時から現在に至るまで色々な所で感じたことを、一部ご紹介します。
1.顔を向けて話そう
部下が質問してきたら、必ず部下のほうへ顔と体を向けましょう。パソコンを入力しながらとか、機械に目を落としたまま目を合わさずに、背中越しで話を聞くのは避けるべきです。分からないから分かろうとして、ミスをしたくないからミスをしないように聞いたのに、そのような態度だと邪険にされた印象が残り、今後聞こうとする意欲を削ぐこととなるでしょう。どうしても忙しいなら、今はどうしてもダメな旨をちゃんと言い、改めて上司から問いかけましょう。
2.忙しいは禁句にしよう
部下が仕事のことで尋ねてきたとき、「今は、忙しい!」とやるのは考えものです。得てして無意識に言ってしまう慣用句ですが、結構言われたほうは傷つきます。周りに誰か居る前で言われると尚更です。「忙」という字は、心を亡くすと書きます。忙しい!と言ったあなたには、周りから見て嫌なオーラを出しています。
3.小さな約束はちゃんと守ろう
部下 「社長、手袋がぼろぼろで新しいものと交換したいのですが、在庫がありません」
社長 「分かった、分かった。入れておくわ」
しかし1週間たってもぼろぼろのまま。このような些細な約束が守られないと、社員の不満が鬱積していきます。社長にとっては何気ないことでも、向こうは必ず覚えているものです。
4.言行を一致させよう
部下に「メモを取れ」と命じている光景を見ます。しかし私がかなり細かいお話をしているにもかかわらず、手ぶらでお聞きになる方があります。本当に頭だけで覚えられるのでしょうか。「だらしないかっこすな」という人もあります。でもその人は第2ボタンまで開けて、ノーネクタイでサンダル履き。これでは言葉に説得力がありません。立派な言葉に納得するのではなく、言葉の背景で納得するのです。
5.ありがとうと言おう。
褒めて育てるという言い方をよくします。でも実際に部下と接していると、結構褒めにくいものです。何故だかよく分からないけれど、言いそびれてしまうこともあります。しかし「ありがとう」「助かった」「ごめんな」「さすが」「○○さんのおかげや」ならどうでしょうか。これだけでも下の者の受け止め方はかなり違います。「おいしい」と言わずに当たり前のように晩ご飯を食べていたら、ある日突然熟年離婚なんていう人間関係に似ていると思うのです。
6.夢を語ろう
中小企業の一般的な傾向として、同族オーナー会社、働く場所は一つ、いつも同じ顔ということがあります。これはつまり一旦その場所で、その人の下で働くことになれば、退職しない限りずっとその人の下で一緒ということを意味するのです。仕事も今のまま、役割も今のまま、人間関係も今のまま、給料も今のまま・・・・。
この状態が一生ずっと続くのかと悲観した瞬間にモチベーションは一気に下がります。せめて夢を語り、今はこの状態でも、近い将来は違うんだという明るい夢を語りましょう。
7.期待をかけよう
よく「ウチにはろくなやつがおらん」と聞きます。確かにこりゃひどいと思う社員がいるのも事実ですが、それは下位20%の人罪です。ほとんどは普通レベルの人です。最初から上位20%の人は来ません。間の60%の中の上中下の問題なのです。普通の人は相手の気持ちに反応して返してくるものです。悪人扱いにすると、普通の人が悪人を演じます。その逆もあるのです。鏡の法則です。相手のパフォーマンスが低いのは、まず自分のコミュニケーションの反応が出ていると考えましょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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