2026年1月~12月
うつ病など長期に欠勤する従業員への会社の対応方法~使える休職規定を整備をしよう~(2026.2月号)
●うつ病など長期に欠勤する従業員への会社の対応方法~使える休職規定を整備をしよう~ (2026.2月号)
うつ病や適用障害などの精神障害や、癌で長期に会社を休む従業員が非常に増えています。一般的な病気や怪我なら回復期も予見可能なことから、そう問題にならないかも知れません。しかし回復の見込みが立たない疾病によって従業員が欠勤する場合、この間の取り扱いは会社としてどのように対応すればいいのでしょうか。今回は会社の労務管理として、その対応方法を考えてみたいと思います。
結論から申し上げますと、中小企業がまずやるべきことは就業規則の中にきちっと休職に関する規定を整備しておくことです。この休職とは、一定の私事事由により従業員が労務不能となったときに、一定の期間、就労義務を免除して職場復帰を待つという性格のもので、解雇の猶予措置と位置付けられています。これは法によって規定が義務付けられているものではなく、公序良俗に反しない限り会社が自由に制度設計することができるのです。そして就業規則の中で、一番活躍する規定でもあります。
ある程度の規模の会社の場合はこれに加えて、リワークプログラムなどの職場復帰支援制度を検討することがありますが、ここでは休職制度に特化してご案内します。
さて、中小企業の就業規則を拝見していると、使える休職規定になっていないことが多く、長期欠勤の従業員がいるとのご相談をいただいても、本人との個別同意が必要になるなど対応に苦慮することがあります。またそもそも就業規則自体を作成していない場合は、言うまでもありません。
私がいままで多くの休職事案を見てきた限りにおいて、おおよそ休職規定を作成するポイントは以下の通りです。
1.休職を発令する事由が適切か?
うつ病などの精神障害にみられる、欠勤を細切れに繰り返す場合や、欠勤はしていないが明らかに労務提供が不完全という状態でも発令できる根拠があるか。
2.休職期間は適切か?
大手企業の就業規則や出来合いのものを転記しただけのものは、傷病手当金の受給期限に合わせた1年6ヶ月とか、中小企業では異様に長い休職期間が見られる。皆でカバーしあって待てる期間はどれくらいか。
3.休職の通知ができない場合の意思伝達はどうするのか?
勝手に休みだして、思うように連絡が取れないことがある。いつからどうやって休職を発令すればいいのか。
4.休職期間の通算制度があるか?
特に精神障害は一旦回復しても、また繰り返すことが良くある。前後の期間を通算できるか。また途中で疾病名が変わったときにも通算できるか。
5.復職のルールは明確か?
主治医の診断書だけでなく、主治医への情報提供依頼や同行、会社指定医の再診断など、厳格な職場復帰のルールが明確になっているか。
6.休職満了時の取り扱いは?
休職が満了したときは解雇ではなく、自然退職扱いになっているか、また復職する場合でも、元の職場へ復帰できない可能性や、労働条件が変更される余地があることも加味しているか。
7.休職期間中の給料や賞与の取り扱いは?
この期間の給料やボーナスの支給は無給で明確になっているか。
8.休職期間中の預かり金の取り扱いは?
休んでいても社会保険料や住民税はかかるので、この取り扱いはどうするのか。
9.完全復帰はできないが軽易な業務ならできる場合はどうするか?
特に精神障害は軽易業務から開始すれば復帰できるとして主治医から職場復帰を促されることがある。そんな場合どうするのか。
10.有給休暇の取り扱いは?
休職期間中に有給休暇を使いたいとの要望があったとき、認める必要があるのか(法的には必要ない)。
11.明らかに復職不可の場合の解雇条項
休職はあくまでも建前上、復職を前提とした制度です。明らかに復帰の見込みが期待できない場合は休職発令せず解雇できる条項があるか。
これらは規定しておくべきことの一例ですが、休職規定を見たときにこれらのことにきちんと規則が答えていれば、いざ困った事案が発生したときも迷うことなく、会社として粛々と制度に乗せて対応すればいいことになります。個別同意は必要ありません。実際の運用ではこういった根拠規定を持っていることを前提に、「休職発令通知」などの書式を使って運用してゆくことになります。
また付言しておきたいこととして・・・・
これらは休職規定自体がないか、規定の作りこみが甘い場合のことを言っていますが、きちんとした休職規定を持っているにもかかわらず、会社がその運用を失念しており、休職発令せずに長期間欠勤や不安定勤務を放置してからご相談をいただくこともありますので、そういった場合も対応が困難になることがあります。
長期間にわたり不就労の可能性があると分かった段階で、ご相談いただけると幸いです。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
2026年1月より下請法が改正されます(2026.1月号)
●2026年1月より下請法が改正されます(2026.1月号)
令和8年(2026年)1月1日から、「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称: 取適法 とりてきほう )」として新たに施行されます。これにより、適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、中小受託取引の公正化と受託側の中小企業の利益保護が強化されます。
近年、労務費や原材料費などのコストが急激に上昇している中、中小企業を始めとする事業者が賃上げの原資を確保し、適切な価格転嫁を定着させることを目指すために、取引の適正化と価格転嫁の促進を図る法改正が行われました。今回は従来の下請法の概要をおさらいしながら、改正内容について解説いたします。
■主な改正内容
1.用語の変更
法律名が「下請け代金支払遅延等防止法」(略称:下請法)から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:取適法)に変更
下請代金→製造委託等代金
親事業者→委託事業者
下請事業者→中小受託事業者
つまり、従来の親企業、下請という用語は法律上はなくなることとなります。
2.適用対象の拡大
(1)事業者の基準の見直し
これまでの資本金基準に加え、従業員数による基準が新たに追加されます。委託事業者・中小受託事業者が資本金基準又は従業員基準のいずれかの基準を満たす場合、取適法の適用対象となります(取適法とフリーランス法の両方に抵触する場合は、フリーランス法が優先されます)。
【製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託※の場合】
○委託事業者 ○中小受託事業者(個人を含む)
・資本金3億円超 → 資本金3億円以下
・資本金1千万円万円超3億円以下 → 資本金1千万円以下
・従業員300人超 → 従業員300人以下 ←今回の改正で追加
【情報成果物作成委託・役務提供委託※※の場合】
○委託事業者 ○中小受託事業者(個人を含む)
・資本金5千万円超 → 資本金5千万円以下
・資本金1千万円万円超5千万円以下 → 資本金1千万円以下
・従業員100人超 → 従業員100人以下 ←今回の改正で追加
役務提供委託※・・・プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
役務提供委託※※・・・プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理を除く
(2)対象取引の追加
従来の製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、新たに「特定運送委託」が追加されました。特定運送委託は、事業者が販売する物品や、製造や修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引のことをいいます。これまでは独占禁止法の枠組みにより規制されていましたが、無償で荷役・荷待ちをさせられている問題などを受け、取適法の対象に追加されたものです。
3.禁止行為の追加
(1)協議に応じない一方的な代金決定を禁止
中小受託事業者から価格協議(値上げ)の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、協議の申し出を無視したり、協議を理由なく繰り返し先延ばしにする場合は、違反になります。
(2)手形払い等を禁止
「手形の交付」や「電子記録債権や一括決済方式のうち、中小受託事業者が支払期日までに代金相当額の金銭と引き換え困難なもの」が禁止されます。
(3)面的執行の強化(相談窓口の拡大)
委託事業者との取引で、「価格協議に応じてもらえない」「代金が全然支払われない」など、取適法に違反しているのではと思ったときは、公正取引委員会だけでなく、事業所管轄省庁においても相談できるようになります。相談内容が委託事業者に知られることはありません。
(4)減額による遅延利息の支払い
正当な理由なく委託事業者が支払代金を減額した場合は、減額した日又は物品等の受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から減額分を支払う日までの期間の遅延利息を支払う義務が追加されました。
以上が主な改正点になります。これを踏まえて、委託事業者の義務と禁止事項の概要をまとめると以下の通りとなります。
■義務事項
(1)発注内容等を明示する義務
発注に当たって、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等を書面又は電子メールなどの電磁的方法により明示すること
(2)書類等を作成・保存する義務
取引が完了した場合、給付内容、代金の額など、取引に関する記録を書類又は電磁的記録として作成し、2年間保存すること
(3)支払期日を定める義務
検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めること
(4)遅延利息を支払う義務
支払遅延や減額等を行った場合、遅延した日数や減じた額に応じ、遅延利息(年率14.6%)を支払うこと
■禁止事項
(1)受領拒否
中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否すること
(2)支払遅延
支払期日までに代金を支払わないこと(支払手段として手形払等を用いること)
(3)減額
中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決定した代金を発注後に減額すること
(4)返品
中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品すること
(5)買いたたき
発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べ著しく低い代金を不当に定めること
(6)購入・利用強制
正当な理由がないのに、指定する物品や役務を強制して購入、利用させること
(7)報復措置
公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、中小受託事業者に対して取引数量の削減・取引停止など不利益な取り扱いをすること
(8)有償支給原材料等の対価の早期決済
有償支給する原材料等で中小委託事業者が物品の製造等を行っている場合に、代金の支払日より早く原材料等の対価を支払わせること
(9)不当な経済上の利益の提供要請
自己のために、中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させること
(10)不当な給付内容の変更、やり直し
中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、無償でやり直しや追加作業をさせること
(11)協議に応じない一方的な代金決定
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定すること
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)




