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2024年4月から雇用契約書の変更が必要となります(2024年3月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2024年1月~12月

2024年4月から雇用契約書の変更が必要となります(2024年3月号)

●2024年4月から雇用契約書の変更が必要となります(2024年3月号)

今年の4月以降に新たに締結する労働契約から、労働条件明示のルールが変更され、雇用契約書に新たに追加して記載する項目が増えます。概要は以下の通りです。

1.「就業場所」と「業務」の変更の範囲を追記すること(すべての労働者が対象)
2.更新上限の有無と内容を明示(有期契約労働者が対象)
3.無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示(5年を超える有期契約労働者が対象)

以下順に見て行きます。

 

1.「就業場所」と「業務」の変更に範囲を追記すること(すべての労働者が対象)

 

(1)追記の対象となる労働者

正社員だけでなく、パート、有期契約者、派遣労働者、定年再雇用者などすべての雇用形態が対象となります。

(2)追記が必要になる時期

2024年4月1日以降に契約を締結したり、更新たりする時期より必要です。契約日が4月1日でも契約締結が3月中の場合は法的には追記の必要はありませんが、先んじて新ルールで行う方が望ましいと思います。

(3)追記が必要な明示事項

「就業場所」と「業務」の変更の範囲を労働契約締結時と、有期契約の更新時に書面で明示する必要があります。これは予め、就業場所や業務内容に異動がある可能性の有無を明示することにより、配転を巡って後々トラブルが起こらないようにする主旨であると考えられます。
よく「私は事務で雇われたので倉庫作業は関係ありません」とか、「私は自宅に近い営業所採用なので、本社には行きません」などというトラブルを避けるためです。

企業にとって都合の良い追記事例を以下に示します。

就業場所:(雇入れ直後)大阪営業所 (変更の範囲)会社の定める場所
職  種:(雇入れ直後)ルート営業 (変更の範囲)会社の定める業務


変更の範囲につき、もっと具体的に、例えば平野支店、八尾工場とか、検品出荷作業、営業事務などと記載する方が予測可能性が高いのですが、このように限定された記載であると、これら以外の場所や業務に就かせる場合にいちいち本人の同意が必要となるため、包括的な表現にしておく方が企業にとっては都合が良いかと思います。

但し職務または就業場所を限定する契約を結ぶ場合は、(変更の範囲)は「変更なし」と記載して頂くことになります。この場合も本人の同意がなければ異動を行うことはできません。


2.更新上限の有無と内容を明示(有期契約労働者が対象)


有期労働契約において更新の回数や年数に上限を設ける場合は必ず明示しなければならなくなりました。この明示できる年数の上限は5年以内となります。上限を定めない場合は追記の必要はありません。
この明示は最初の契約時のみでなく、有期契約の更新のタイミングごとに行う必要があります。

記載例は以下の通りです。

契約期間:令和6年4月1日から令和7年3月31日
     (1)更新する場合は以下の基準を満たす場合に更新する
       ※基準は割愛
     (2)例1 契約を更新する場合でも通算4年を上限とする
        例2 契約の更新回数は3回までを上限とする

また。今まで更新上限がなかったところ、これを新設する場合や、更新年数や回数を短縮しようとする場合は、必ずその事由を事前に説明することが必要となります。あくまでも説明であり、納得までは必要ありません。


3.無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示(5年を超える有期契約労働者が対象)


(1)無期転換とは

同一の会社との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申し込みにより無期労働契約に転換されるルールです。パートが正社員に変わるという意味ではなく、あくまでも契約期間が有期から無期に変更されるというこです。申し込みがあった場合、会社はこれを拒否することはできません。


(2)明示の対象となる労働者

同一の会社で契約期間が5年を超える有期契約労働者が対象となります。仮に無期転換を行使しないと明言していても関係ありません。


(3)無期転換機会の明示

無期転換権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨を追記する必要があります。これまでは有期契約労働者が自ら申し込んで来ない限り、会社の方から告知などの必要はなく、言わば受け身で良かったのですが、今後は会社の方からプッシュして行く必要が生じるということです。


(4)無期転換後の労働条件の明示

無期転換権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を明示する必要があります。要するに契約期間の他に変更される条件があるのかどうかを明示する必要があるということです。


(5)記載例

(3)及び(4)につき、会社にとって良いと考えられる記載例は以下の通りです。

※本契約期間中に会社に対し、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の申し込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(●月●日)から無期労働契約に転換することができる。
※無期に転換した場合の労働条件は従前と同一とする。但し職務及び就業場所に限定がある場合は、これが解除され、異動を命ずることがある。また定年は60歳の誕生日とし、60歳以降で無期転換した場合は、定年を65歳の誕生日とする。適用される就業規則は●●規程とする。

最後に、そもそも中小企業においてはきちんと雇用契約書を交わさず、口頭で済ませているケースが散見されますが、今回の法改正を契機として、トラブルの無いようにきちんと書面を交わすようにしましょう。


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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