労使協定の労働者代表は適正に選任されていますか?(2026.7月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2026年1月~12月

労使協定の労働者代表は適正に選任されていますか?(2026.7月号)

●労使協定の労働者代表は適正に選任されていますか?(2026.7月号)

~裁判で否認されると会社にとって怖い結果になります~

 

皆さんの会社でも毎年、36協定や1年単位の変形労働時間制の協定届を締結して労基署に届け出しておられるところが多いと思います。これらは労使協定と呼ばれるもので、中小企業が締結する主な労使協定には以下のようなものがあります。

(1)36協定(時間外・休日労働に関する協定)※
(2)賃金の一部控除に関する協定(賃金控除協定)
(3)1年単位の変形労働時間制に関する協定※
(4)フレックスタイム制に関する協定
(5)育児・介護休業法に基づく協定

 

※印は労基署への届出が義務となっているもの

 

労使協定とは免罰効果を有するもので、適正に協定することで刑罰を科されない効果があります。例えば最も一般的な36協定を例に挙げますと、本来労基法では1週40時間、1日8時間を超える労働を禁じており、これに違反した場合は6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される可能性があるのです。つまり残業は刑事罰の対象となる違法行為になるのですが、36協定を締結して届け出しておくと、その範囲内で残業させても刑罰が科されることはありません。これを免罰効果といいます。

 

ただ、適正に協定されていないと紛争となった場合にその労使協定は無効となってしまいます。そして適正でないとみなされる最大の原因は、労働者代表の選出方法に瑕疵があることなのです。簡単に申しますと、「労働者代表が民主的手続きによって過半数労働者の信認を得ていない」ことが多いということです。

 

労使協定の一義的な意味は免罰効果ですが、付随的に民事的効力を持つ場合があります。適正に協定されていなければ、未払い残業代の問題としてリスクとなることがあるのです。

 

具体的に申しましょう。1年単位の変形労働時間制に関する協定はよく中小企業で登場する労使協定です。完全週休2日制でない限り、この協定を結ばないと1週平均40時間とならないことから、よく登場するものです。

この1年単位の変形労働時間制に関する協定とは、特定の週に40時間を超えることがあっても、1年間(約52週)を通じて平均して40時間以内に収まっておれば違法とはなりません。

例えば1日8時間の会社の場合、年間105日の休日を割り振れば、1週平均は40時間に収まります。この場合、いくつかの週で週6日勤務となり、週48時間となって1週40時間を超えてしまいますが、「適正な1年単位の変形労働時間制の協定」があれば違法となならず、かつ40時間を超過している8時間分について割増賃金を支払う必要はありません。

 

しかし「適正な1年単位の変形労働時間制の協定」でない場合、つまり「労働者代表が民主的手続きによって選出されていない場合」は様相が異なります。
適正でないとみなされると、きちんと届出していても無効となり、1週40時間の大原則に引き戻されるのです。
ということは、週48時間の週の8時間分についてすべて割増賃金が必要となり、しかも過去3年に遡って従業員全員に多額の負債を負うこととなるリスクがあるのです。

 

先ほどから申している「労働者代表が民主的手続きによって選出されていない場合」とは以下のようなケースです。

 

◎使用者側が事実上特定の人物を代表者として扱っている

◎労働者による投票や挙手、話し合い、持ち回り決議などの民主的手続がない

◎選出の記録がなく、民主的選出が行われたことの立証ができない

◎労使協定締結のための代表者を選ぶことが明示されていない

◎前に話し合いで選出された代表者が、その後任期更新も選出手続もなく毎年協定を締結している

◎親睦会代表が自動的に労働者代表とされている

◎過半数労働者の信認を得ているか不明

◎正社員だけで信任投票をしており、パートやアルバイトなど全ての労働者を代表していない

◎管理監督者が代表となっている

◎事業場(場所単位)ごとに選出されていない

 

こういったリスクは1年単位の変形労働時間制の協定だけでなく、他の労使協定においても同様です。

例えば、「36協定(時間外・休日労働に関する協定)」に瑕疵があれば、そもそも残業させたこと自体が違法となります。「育児・介護休業法に基づく協定」に瑕疵があれば勤続1年以内の労働者や週2日以内しか来ない労働者から育児介護休業の申し出があっても拒否することはできません。

たかが労使協定、と思わずに非常に大切なものであることを認識頂いて、適切に労働者代表を選んでください。

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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