平成30年1月~12月
今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
~働き方改革に対応できる企業が生き残る時代へ入った~
●今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
経営者の皆様は、ほとんど日経新聞を購読しておられると思いますが、昨年、見出しで多かったなあと思い出されることは何ですか?
私個人的には、「AI」がその一つですが、もう一つ、というよりもう一テーマあったように感じています。それが「労働生産性」とか「長時間労働の是正」とか、或いは「働き方改革」といった言葉です。皆様も印象に残っているのではないでしょうか?
今、政府ではこれらに関し、どういった法整備を準備しているかご存知でしょか?まずはその概略をご紹介し、その後、企業が取り組むべき方向性を考えて行きたいと思います。
■今後、予定されている法整備(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱)抄
1.長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
(1) 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法)
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。
・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
(2) 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。
2. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(1) 不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間・有期雇用労働者、派遣労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、ガイドラインの根拠規定を整備。
(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等 )
(2) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
3.施行予定日
・1は平成31年4月1日(中小企業における割増賃金率の見直しは平成34年4月1日) 、2は平成32年4月1日)
これらの改正法案は、この1月から始まる通常国会で成立する見込みの高いものです。
また、これとは別に、昨年、「働き方改革実行計画」が纏められ、その概要は以下の通りとなっており、今後、この方向性で法律案が出てくるものと思われます。
1.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2.賃金引上げと労働生産性向上
3.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
4.柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク、副業・兼業の推進など)
5.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
6.病気の治療と仕事の両立
7.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
8.高齢者の就業促進
9.外国人材の受入れ
ここでもお分かりの通り、ちゃんと2に今回のテーマでもある「労働生産性向上」が入ってきています。今後、世の中はこういった方向性で進んで行くこととなるのです。
■これから企業が具体的に取り組むべき方向性
以上の概況を理解した上で、企業はどこから手を付けて行けば良いのでしょうか?もし暗中模索の状況なら、以下の切り口で考えてみてください。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
2.社内の仕組みの改革
3.業務システムの改革
4.人事制度の改革
以下、順に簡単に解説いたします。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
今後、社会が長時間労働による非効率な働き方を許さない時流になって行くとの理解をもち、時間を掛けて仕事をすることは悪であるという社風を作り上げていく改革です。残業は当たり前、夜遅くまで頑張っている、なんて感覚を撲滅して行きます。
2.社内の仕組みの改革
そもそも労働生産性とは、次の算式で表すことができます。 労働生産性=インプット(成果)↑÷アウトプット(総労働時間)↓
つまり成果を落さずに(むしろ上げて)、投入時間を減らすことなのです。このためには社内のマネジメントの改革が必要です。仕事の取り方、流し方、処理の仕方など、今までのやり方を疑ってかかります。
3.業務システムの改革
典型的にはITやAIの更なる活用です。前記2がソフト改革だとすると、こちらはハード改革です。飲食店が各テーブルにタッチパネルを置くのもその典型例でしょう。日進月歩の世界、より効率化できるIT機器への情報収集と設備投資が欠かせません。
4.人事制度の改革
残業が減って給料も減る。こうなると中々実効性が上がりません。良い思いをするのは会社だけという冷ややかな反応になってしまいます。従って、アウトプット(成果)を上げながらインプット(投入量)を下げた従業員を高く評価し、待遇に反映させる人事制度が考えられます。
また、リモートワークや在宅勤務など、勤務形態を多様化させることで投入量を減らすことも検討します。
今のままでもあと10年は逃げ切れるかもしれません。しかしその先は・・・・・・・・。
待ったなしの働き方改革!!単なる労務問題ではなく、経営課題となってきています。まだ経営課題として取り組んでいない企業は、今年から取り組んで行きませんか?
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)