平成30年1月~12月
年次有給休暇について その1
年次有給休暇について その1 (2018.6月号)
●年次有給休暇について その1 (H30.6月号)
皆様こんにちは、西村社会保険労務士事務所の坂口です。今回のメルマガは坂口が担当させていただきます。
さて労務相談も10年前と現在ではその内容が変わってきたことは以前お伝えさせて頂きましたが、相変わらず多いのが有給休暇に関してのご相談です。今回は2回に分けて年次有給休暇の付与要件、付与日数等につき、多いご質問、ご相談、対応例、今後の法改正等の動向をご紹介させて頂ければと思います。
○付与要件
1.6ヶ月継続勤務した労働者
→全労働日(注1)の8割以上出勤(注2)したこと
2.1年6ヶ月以上継続勤務した労働者
→6ヶ月経過日から1年ごとに区分した各期間の初日の前日が属する期間において全労働日の8割以上出勤したこと(注3)
(注1)全労働日とは
労働契約上、労働義務の課せられている日をいい、具体的には就業規則等で労働日として定められた日のことで、一般的には6ヶ月(又は1年ごとに区分した期間)の総歴日数から所定の休日を除いた日がこれに該当します。
ただし次の各日については、全労働日に含まれません。
・所定休日に出勤した日
・使用者の責に帰すべき事由による休業日
・正当な争議行為により労務の提供が全くされなかった日
(注2)出勤したものとみなされる期間
次の期間は、付与要件とされる8割以上の出勤の算定においては出勤したものとして取扱われます。
・業身上負傷し、又は疾病にかかり療養の為に休業した期間
・育児介護休業法の規定による育児休業又は介護休業をした期間
・産前産後の女性が労基法第65条(産前産後休業)の規定によって休業した期間
・年次有給休暇を取得した日
◎最近は中小企業においても育児休業の取得者が増えてきており、その際出勤率の算定にあたって育児休業、産前産後休業中も出勤したものとして取扱われることに驚かれる経営者の方が多いです。
(注3)
付与日数を勤続年数ごとに表にしたものが以下になります。(通常の労働者)
6ヶ月 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年
(8割以上)|(8割未満) |(8割以上) |(8割以上) |(8割未満) |(8割以上) |
10日 0日 12日 14日 0日 18日
○付与日数について
1.通常の労働者の付与日数
勤続年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
日 数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
2.週所定労働時間が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
所定労働日数 1年間の所定労働日数 勤 続 年 数
0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
○労働者の時季指定権
使用者は、労働者が請求する時季に年次有給休暇を与えなければならない。
○使用者の時季変更権
請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合についてのみ
→他の時季に変更することができる。
つまりは使用者として労働者からの年次有給休暇ついての請求において行使できるのは、時季変更権しかなく、その時季変更権においても事業の正常な運営を妨げる場合についてのみ行使できるものであって、事業の規模、業種、業務の繁忙期、請求日数、請求の時期などを元にして総合的に判断する形になりますが、単純に忙しいからや、人員不足だからといった理由では時季変更権の行使は難しく、年次有給休暇を取得させる為の代替要員の確保を行ったか、その為の時間的余裕が会社側にあったかなどから総合的に判断されるものであり、また当然年次有給休暇の取得理由は使用者の干渉を許さないものであり、どのように利用するかは労働者の自由であり、利用目的によって拒否することや条件付きで認めることは認められません。
○年次有給休暇の賃金
有給休暇期間の賃金の支払い方としては次の3つの方法のいずれかで支払わなければなりません。
原則
就業規則その他これに準ずるものの定めによる場合
1.平均賃金
2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
3.健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定で定めた場合)
通常は2がほとんどではありますが、パートなどにおいて毎日の所定労働時間が異なるような場合は1の平均賃金を採用する旨規定し、運用する場合があります。
以下次号
(文責 社会保険労務士 坂口 将)